※金正恩としてはあくまでの「体制維持」をしながら核を保持することが理想、生き残るために核のカードをちらつかせながら経済制裁の圧力緩和に持ち込もうと目論んでいたのでしょうが、さすがに今回の米朝会談中止の発表は想定外だったようで、慌てて「対話の道は閉ざされていない」と、土下座せんばかりのすり寄りを見せています。

 北朝鮮に限らず韓国もそうですが、相手が強く出ると譲歩の姿勢を見せます。が、そんなときにも必ずその場しのぎの嘘をつくのも彼らの民族的な特徴ですから、北朝鮮の低姿勢には必ず裏があると思っていて間違いないでしょう。

 日本政府も北朝鮮がこのような反応を見せるだろうことはおそらく想定内、この機に乗じて拉致被害者の奪還に動くということはアメリカとの協議の中で織り込み済みかもしれません。
 北朝鮮は経済復興のために日米の支援が欠かせない事は十分承知していますから、タイミング的には絶好期といえます。

金正恩

 今回の中止表明は北朝鮮にとっては想定内だったのでしょうか。ソウルから報告です。
 (良永晋也記者報告)

――これまで揺さぶりを続けてきた北朝鮮にとってもこの中止表明はさすがに想定外だったと思われます。ただ、その後の反応は素早いものでした。

金桂冠(キム・ゲグァン)

 25日の午前中には、金桂冠(キム・ゲグァン)外務次官の名前で談話を発表しています。
 激しい反発も当初、予想されたのですが、ふたを開けてみると、意外にも「関係改善のための首脳会談がどれだけ切実に必要か」などと対話の必要性を切々と訴える内容になっていました。
 さらに、この談話では、トランプ大統領のことを「内心は高く評価していた」とまで言っています。

 北朝鮮がここまでアメリカに歩み寄った表現をするのは極めて異例なことです。
 そもそも、アメリカと北朝鮮の折り合いがつかないのは、非核化に対する考え方が違うからでした。

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坑道が爆破され廃棄された豊渓里(プンゲリ)の核実験場=25日

 しかし、この点でも、北朝鮮はトのランプ大統領が示した方式を「賢明な案だと内心期待していた」と言っています。そのうえで、対話の扉は開かれていることをアピールしています。

 北朝鮮は、プライドよりも首脳会談で得られる利益を取ったともいえます。
 専門家は、北朝鮮がこれからさらなる譲歩案を示す可能性を指摘しています。
 これに対して、アメリカがどのような反応をするのかがポイントになりそうです。
ANN 5月25日

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