444831b4検証①ではまず被害者に焦点をあて、宮澤さん一家が狙われた理由、犯行の動機などの原点を探ってみました。

次に、現在に至るまでの捜査状況を、可能な限り事実に基づいて再検証してみたいと思います。

――捜査本部作成チラシの変遷――

(1)最初の緑背景のものは情報も大ざっぱで、通報するにしてもこれでは特定は難しいでしょうね。
 上着の中の服装と身長、足のサイズ、ウエストサイズを書いて「このような男が犯人です」、情報をくださいと言われても通報のしようがありません。
 
seta ・なぜか特定に至る有力な情報を隠し、核心に迫るには程遠いところから小出しにしていた。

 ・「犯人が年賀状を持ちだした形跡がある」と発表。

 これにより犯人は顔見知り? とも言われていたが、いつの間にか年賀状の話も顔見知り説も立ち消えに。

 ⇒年賀状の件
 かなり後になって、「聞きとり捜査のために一部の捜査員が持ち出したまま戻していなかったために行方不明だった」ことが判明。

 捜査本部内でも捜査の足並み、“質”にばらつきが有ったということなのでしょう。

 結局、初動のミスや第一発見者によって現場保存が不完全な状態になったことで報道も各社バラバラ、しばらく混乱状態が続いていました。


(2)何年か経ってからの修整版チラシが下のものです。
この頃には世間の関心も薄れがちになり、風化はしないまでも、“年末になると思いだす凄惨な事件”となる。
seijo_pos_2013 事件発生の時期が時期だけに話題にしづらいというのもあり、思い起こしはするものの熱心に語ることも憚られるという側面もあります。


●断続的に細かい情報を小出しにしていたものの、すでに現場の状況も捜査員も入れ替わり、人々の記憶も薄れはじめる。

●一万を超す情報もほとんどボツ扱いになったため、遺留品だけが頼りという状態に。

●懸賞金は段階的に上がっていったが、皮肉なことに殺人事件など凶悪犯罪の時効が廃止された頃から報道量や扱いが小さくなっている。


(3)犯人に関する情報がほぼ出そろった最新のチラシが下
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●靴のサイズ――同メーカーでは27.5と28.0は同じ靴枠を使っている。
 マフラー以外は製造・販売元などが判明している。

e2be744a●マフラー――事件当時、一部で「都内の某高校のマフラーに酷似」というニュースが流れる。

 ある時から“犯人は外国人”という方向に傾いていった印象があり、都内の高校生たちが騒いでいたマフラーの件も立ち消えになる。

●ヒップバックやジャンパーに入っていた砂はアメリカ西部のモハヴェ砂漠三浦半島のもの?

●犯人の着衣から2種類の蛍光塗料が見つかる
 →印刷関係などの職業、あるいはスケートボーダーか?
 この塗料は、当日犯人が立ち入ったはずのない車庫からも見つかっている。
 
●捜査員が指紋照合のために韓国に行くも、韓国政府が照合を拒否
 見つかった指紋は渦状紋。(朝鮮民族系はほとんど渦状紋と補足有り)

●二階に脱ぎ捨てられていたユニクロのジャンパー
 事件当時メーカー名はボカされていました。
 このほかに椅子の背もたれにかけられたままの黒のダウンジャケットがありますが、犯人は気温2.2℃くらいの中、上着などを着ずに逃走したことになります。

 さらに、遺留品が全部単独犯人のものだとすると、犯人はジャンパーの上にダウンジャケットを着ていたことになりますが、事件当初は「犯人が返り血を防ぐために着ていたのでは?」とも言われていました。

 が、血だらけのトレーナーが脱ぎ捨てられていたこと、ジャンパーには袖口あたりに血がわずかについていただけということに関しては、それ以降大きく取り上げられることはありませんでした。

fukusou13●逃走時の服装
 右は犯人が着替えて逃げたというみきおさんのトレーナー。

 昨年末の検証番組で、事件当日の深夜、「目つきが普通じゃない男が、被害者宅の空き地の方から慌てた様子で車道に走り出て、乗用車に轢かれそうになった」という情報が再浮上していることを知りました。

mokugeki 事件当初からの有力な目撃情報でしたが、当時の証言者たち曰く、「なぜか捜査本部から否定され、それっきりになった」。


●犯人の身長
 175~180センチとされていたが、170~175センチに訂正されている。

 捜査本部の見解が、
「犯人は朝まで被害者宅に居座っていた」
だったために、上記の情報は採用されなかったようです。


※捜査本部が単独犯による犯行、犯人は日本人ではない、朝まで室内にいた、などと断定する方向に持っていったことで、捜査は完全に手詰まり状態に。
  
 目撃者を含む一般の国民は、バイアスがかかった警察発表に基づく報道の中から真実を拾いあげ、正しく推理することはほとんど困難な状況だった。 

 その結果、妄想にも近い“これが真相”本が出版されたり、“実話系雑誌”が某脳機能学者を使って  「ホメオスタシス同調効果理論に基づくプロファイリング」 なるものを展開するなど、ほとんど皆が勝手気ままに想像、推理しているのが現状。
 
    *

 筆者がこの事件についてこれまで触れなかったのは上に書いたことなどが理由なのですが、この度、ある人物とその背景において複数のポイントでリンクしていることに気付き、無視できない事件としてあらためて検証するに至りました。 


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