※6月23日、英国でEU残留か離脱かを問う国民投票によってEU離脱派が勝利したことを受け、キャメロン首相が辞意を表明。EU内でドイツに次ぐ経済大国であるイギリスが離脱することによって欧州は分裂し、今後世界経済にもさらなる混乱が予想される。

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 【ブリュッセル時事】
欧州連合(EU)は、英国民が自ら進んで離脱を選択し、正面からEU統合を否定したことに大きな衝撃を受けている。

 原加盟の6カ国から28カ国に膨らんだ拡大路線は頓挫を余儀なくされた。各国で今後、国民投票が実施され、英国に続く「ドミノ離脱」に発展する可能性もある。EUは発足以来、最大の危機を迎えた。

 トゥスクEU大統領は投票前、英国が離脱を選択すれば「(EU)分裂に向けた第一歩になる恐れがある」と警告。恐れていた離脱が現実となった。EU首脳らは域内の動揺を早期に収拾し、分裂の芽を摘むため変革に向けた新たな戦略を提示しなければならない。困難な課題を背負うことになった。

 EUは投票結果を受け、24日にユンケル欧州委員長、トゥスク大統領、シュルツ欧州議会議長、EU議長国のルッテ・オランダ首相によるトップ会合を開催。28、29両日のEU首脳会議では英国を除く27カ国の結束を再確認する。

 ただ、英国での投票結果を受け、各国で支持を伸ばすEU懐疑派が勢いづくのは確実だ。フランスの極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首は21日、仏テレビに対し、「フランスでも国民投票実施を求める。全てのEU加盟国もそうすべきだ」と訴えている。

 オランダでは4月、EUとウクライナの「連合協定」の是非をめぐる国民投票を実施。投票は実質的にEU統合の深化が争点だったが、反対が多数を占めた。EU懐疑派は、英国の投票結果を受け、オランダでも新たな国民投票実施に持ち込めば、離脱の結果が得られると自信を深めている。そうなればEUは一段と求心力を失い「崩壊」の瀬戸際に追い込まれる。

 EU懐疑派が各国で支持を伸ばす背景には「EUの政策が選挙で選ばれていない官僚によって決められ、民意が反映されていない」ことへの不満がある。トゥスク大統領は英国の投票を前に「英国民投票で示された警報を無視するのは愚かだ」と述べ、結果にかかわらずEUには抜本的な変革が必要と説いた。

 最大の危機をバネに真に民意を反映し、有権者が納得できる新生EUの姿を提示できるか。EUに残された時間は多くない。
時事通信


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