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 京都市は21日、2016年の観光総合調査の結果を発表した。
 市内を訪れた観光客のうち、無許可の違法民泊の利用者が110万人程度に上るとの推計値を初めて算出した。
 1年間に訪れる修学旅行生と同じ規模の観光客が違法民泊を利用していることになり、市は「市民の安全、安心の面で大きな課題がある」と危機感を強めている。

 16年の市内の宿泊観光客数は1415万人、うち外国人宿泊客数は318万人でいずれも過去最高を更新した。
 これらは旅館業法の許可を得ているホテルや旅館、民泊などの報告を基に算出しており、無許可民泊の利用者は含まれていない。

 市はこれまでの民泊の実態調査を基に、仲介サイトの物件情報などから市内に約5千件の違法民泊があると推定し、稼働率3割として利用者を試算した。
「大半は外国人観光客とみられる。稼働率は低めにみており、利用者はさらに多い可能性もある」(市観光MICE推進室)という。

 また、観光総合調査の中で毎回実施している外国人観光客からの聞き取りで、今回は宿泊施設の選択肢の中に、違法民泊になるケースのある「アパート・マンション」を初めて設けた。

 回答者約1800人の中で、14%が利用したと答えた。ほかはホテル40%、旅館22%、町家・宿坊・ゲストハウス10%。アパート・マンションを選んだ人の地域別ではオセアニアが23%で最も多く、東南アジア19%、欧州19%と続いた。
 16年の修学旅行生は前年比1・1%増の110万5千人だった。

 記者会見で門川大作市長は「旅館業法の許可施設は衛生や防火面で管理がきちんとしている。
 しかし、無許可の民泊では外国人客のパスポート確認も十分でなく、火災や食の安全で問題が起これば大変なことになる」として、民泊新法の施行に合わせた規制強化策の検討を急ぐ考えを示した。
京都新聞
6/22(木) 

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 ◇民泊ビジネス、京都で広がる 訪日客増加で堅調需要見込む

 マンションや空き家に有料で観光客らを泊める「民泊」に関するビジネスが京都で広がっている。
 民泊についてはまだ十分なルールが定まっておらず、近隣住民とのトラブルも少なくないが、各社は訪日外国人観光客の増加により今後も堅調な需要が見込めると判断。
 許可を得た民泊を対象に、管理・運営の支援や鍵の受け渡しに関するサービスの開発などを進めている。

 民泊運営支援のMiyako Village(京都市左京区)は、自社物件と管理を委託された物件の計約10件で民泊を運営している。
 宿泊者には、JR京都駅前の拠点で鍵を渡し、宿泊後には業者に委託して室内を清掃している。

 近隣住民とのトラブルを招かぬよう、開業前に周辺へのあいさつを行い、宿泊者にも騒がないよう厳重に注意する。
 室内でのたばこは厳禁で、宿泊者が近隣にごみを出さないよう室内に大型のごみ箱を配置している。阿部誠介社長は「簡易宿所の許可を取るなど、法に基づき運営している。
 民泊を目指す人に室内改装や運営の助言をするサービスにも力を入れたい」と意気込む。

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 民泊情報管理のジェイピーモバイル(下京区)は8月から、民泊管理者向けに、適切な単価設定や稼働率の把握ができるインターネットサービスを提供し始めた。

 同社は世界の民泊の単価などを調べる米国の会社と提携しており、登録すれば競合物件の数や平均単価、稼働率などが分かる。
 騒音や温度などを常時管理するセンサーも販売しており、田中良介社長は「収益を上げるためにベッド数を増やすなどの助言ができるようにしていきたい」と話す。

 製造支援サービス、ものレボ(同)は、システム開発のFunnel(伏見区)と提携し、民泊向けに引き戸の玄関の鍵を遠隔操作で開閉できる技術を開発している。

hikido 既存の引き戸に設置できる製品(右)として来春に販売予定で、カメラとセンサーで入退室の人数を(遠隔操作で)把握する機能なども搭載する予定という。

 ものレボの細井雄太社長は「夜間の出入りが激しいと注意を促すようなサービスも展開したい」としている。このほか、ハウスドゥも民泊に関して物件の開発や運営を準備するなど、市場の裾野は拡大している。

 2020年の東京五輪などを踏まえ、国は民泊の規制緩和に向けてルールを見直す考えだ。
 ただ、京都市は無許可の「ヤミ民泊」による苦情が多く寄せられているだけに、地域実情に合わせた「京都らしい民泊」の展開を目指す。
 企業や民泊事業者側も行政と連携しながら、住民や既存の宿泊業者らの理解を得られる対応が欠かせない。
京都新聞