紀平梨花

 昨年4月に現役を引退した浅田真央の代名詞だったトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を完全に習得し、浅田の後継者として名乗りをあげたのが紀平梨花(15歳)だ。
 浅田の場合は同じ年齢ですでにジュニア大会を席巻、シニアデビューを華々しく飾っていたが、紀平もジュニア2年目の今季、少しずつ活躍が目立つようになってきている。

 紀平が初めてトリプルアクセルを国際大会で成功させたのは、昨季のジュニアグランプリシリーズ(GP)のリュブリャナ杯。単発で跳んで、史上7人目のトリプルアクセルジャンパーとなった。
 それ以来、試合で武器として跳べるレベルにするために練習を積み重ねた。コツを掴むまで時間はかかったが、ついに「自分のジャンプ」にできたところだ。

紀平梨花 伸び盛りの選手というのは恐ろしく成長スピードが速い。
 昨年12月のジュニアGPファイナルでは、女子史上初となるトリプルアクセル+3回転トーループの連続ジャンプを見事に跳んでみせた。

 そのジャンプは大きな武器となったわけだが、大会の結果をみると、残念ながら強敵のロシア勢にあと一歩及ばず、総合4位に終わっている。

 ファイナルで偉業を成し遂げた紀平が、これからどこまで成長を見せてくれるのか。
 スケート関係者のみならず、多くのファンが注目するなかで迎えたのが全日本選手権だった。
 年齢制限のため平昌五輪には出場できないが、大技のトリプルアクセルを武器にできれば、大会の台風の目になる。紀平は、そんな期待した通りの戦いを繰り広げた。

 12月21日に行なわれたショートプログラム(SP)で、紀平はジュニア大会では跳べなかったトリプルアクセルを力強く、クリーンに決めた。力みのない美しいジャンプで、出来栄え点(GOE)で1.43点の加点がつくほどだった。

 全日本ジュニア女王は「決められたのはすごく嬉しい。練習からよかったので緊張感はなかった」と会心のジャンプを振り返った。
 女子SPでのトリプルアクセル成功は、15年12月のGPファイナルで成功した浅田以来だという。

 SPでの成功で波に乗った紀平は、挑戦者として臨んだフリーでは単発と連続ジャンプでトリプルアクセルを跳び、計2本の大技を成功させた。
 1試合でSP1本、フリーで2本の計3本のトリプルアクセルを決めたのは、バンクーバー五輪でギネス記録をうち立てた浅田以来、2人目となる快挙だ。フリーの結果は141.29点の高得点を出して2位となり、合計208.03点で、SP5位から総合3位に食い込み、初めて全日本の表彰台に上った。

 トリプルアクセルジャンパーになった紀平はまだ10代半ばで、身体にはこれから大きな変化が出てくる。女子選手の多くは、いまは跳べている他の3回転ジャンプでさえ、思春期の成長時には崩れてしまう。それだけに、これからの身体的成長と技術のバランスをどうコントロールするかが、シニア転向後に世界のトップ選手として活躍できるかどうかのカギを握るはずだ。

3 紀平のいまの容姿を見ていると、浅田やバンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナと似ているところがある。
 また、基礎がしっかりしており、癖のないジャンプを跳んでいるので、体重が大幅に増えない限り、それほどの大崩れはしないかもしれない。

 一方で、浅田の現役時代を振り返ると、トリプルアクセルを武器にするのはもろ刃の剣となる危険性がある。平昌五輪後には大きなルール改正が予定されているが、現状では女子にとってのトリプルアクセルは必ずしも大きな武器になるとは限らず、ハイリスクでローリターンという状況にもなりかねない。

 それでも紀平のトリプルアクセルは非常に素直なジャンプで、どこにも無駄な力が掛かっていない。ブレの少ない美しいジャンプなので、さらに磨きをかければ素晴らしい武器になる可能性も十分にある。

「トリプルアクセルは自分の武器だなって、最近、思えるようになりました。これからも確率をさらに上げて、絶対に確率が落ちないように、そしてずっと跳び続けられるように頑張りたいです。そこが一番重要だと思っているので、これから4年後も絶対跳べるようにしたいです。そして、浅田真央選手にさらに近づけるようにしていきたいなと思います」

 モチベーションは高く、やる気満々。15歳の将来は大いに期待できそうだ。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha
web-sportiva 1/12(金)

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紀平梨花

※浅田真央選手の時にも感じましたが、ポテンシャルの高い伸び盛り選手がピークの時に年齢制限でオリンピックに出られないというのは残念、かつ酷な運命だなと感じます。
 本田真凛選手など華のある選手もいますが、筆者は以前からこの紀平梨花選手に注目していました。良い師について心身ともにトップ選手として成長することを期待しています。