「弁護士への懲戒請求制度は請求者の氏名、住所が請求を受けた弁護士に伝わります。」
 この部分について、当該ブログ主は「懲戒請求者の氏名は伏される」「弁護士会から弁護士に個人情報が伝わることはない」などと、事実と異なることをブログに書いて読者を煽っていたことがNHKのクローズアップ現代その他で報道されています。

 大量懲戒請求問題が発覚した後も、当該ブログが同様の誤情報を発信し続けた結果、懲戒請求された弁護士らが懲戒請求者を業務妨害や名誉毀損等で提訴、現在確認できるだけで原告弁護士7人による100件超の裁判が予定されています。

※この扇動行為等を巡って複数の弁護士がブログ主の個人情報開示を請求し、昨年12月13日、裁判所により開示命令が下されています。
 
 これらに抗するように、ブログ主催者側が「K弁護士を訴額7億2000万円で訴える」「S弁護士、K弁護士は各1億2000万円、その他、読者を訴えた弁護士とその代理人弁護士、当該弁護士会も訴える」などと不合理かつ荒唐無稽とも思える主張をブログで展開し続けていることで訴訟合戦に発展する可能性も出てきました。

懲戒請求者の氏名は伏される

以下、琉球新報

 ◇「日弁連の声明に関わっていないのに制度を悪用された」

 2017年11月から12月にかけて、沖縄弁護士会に県外から大量の文書が郵送されてきた。届いた文書は961通。送り主は北海道から沖縄まで、全国各地に住む個人だった。文書の内容は判を押したかのようにほぼ同じだった。

 「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、推進する行為は確信的犯罪行為である」

 当時の沖縄弁護士会会長と、同会に所属し朝鮮にルーツがある在日コリアンの白充(ぺクチュン)弁護士の懲戒を求める「懲戒請求書」だった。いずれもインターネット上のブログ「余命三年時事日記」の呼び掛けに応じた読者が署名し、郵送で送ったものだ。

 この懲戒請求書にある「朝鮮人学校補助金支給要求声明」とは、日本弁護士連合会(日弁連)などが出した声明を指す。
 文部科学省は16年、朝鮮学校への自治体の補助金支給について再考を促す通知を出した。
 これに対し、日弁連は声明を出し「政治的理由により補助金の支給を停止することは、朝鮮学校に通学する子どもたちの学習権の侵害につながる」と反対した。

 日弁連によると、弁護士への懲戒請求は弁護士法違反や、所属弁護士会の秩序や信用を害するなど「品位を失うべき非行」があった場合に、弁護士に懲戒を科すことができる。

 沖縄弁護士会に届いた「懲戒請求書」は日弁連の声明を引き合いに出し、沖縄弁護士会会長と白弁護士が声明に賛同するなどの「確信的犯罪行為」があったなどと記していた。
 だが沖縄弁護士会会長、白弁護士ともに「品位を失うべき非行」があったわけではない。日弁連の声明に関わってすらいなかった。にもかかわらず、制度を悪用されて懲戒請求を受けていた。

 発端のブログ「余命三年時事日記」は琉球新報など沖縄2紙や全国の報道機関、研究者を対象に検察などの捜査機関に「告発状」を出してきた経緯がある。

 ◇懲戒事由が事実無根の場合、請求者に損害賠償の支払いを命じた判例も

 通常、捜査機関は告発者の氏名を告発対象者に知らせることはないが、弁護士への懲戒請求制度は請求者の氏名、住所が請求を受けた弁護士に伝わる。

 懲戒を求める理由が事実無根の場合、請求者に損害賠償の支払いを命じた判例も出ている。だが、このブログでは「懲戒請求者の氏名は伏される」として広く賛同を呼び掛けていたのだ。

 ブログの内容を信じて懲戒請求を出した関東在住の男性が取材に答えた。男性によると、これまでもブログで募った捜査機関への告発状に賛同して出したが「不受理」などで返送されてきていたという。

 男性は「告発状は不受理などとして戻ってくることが繰り返しあった。今回(弁護士への懲戒請求)も同じようにやった。制度の趣旨がよく分からなかった」と語った。

 「余命三年時事日記」が発端となった弁護士への懲戒請求は、17年から全国各地の弁護士会や在日コリアンの弁護士に対して大量に出された。例年、懲戒請求は4千件以下だが、17年は13万件を超えている。一つのブログが仕掛けた弁護士への攻撃は読者らの間で爆発的に広がっていった。そして「趣旨を分からない」まま懲戒請求を出したブログ読者自身にツケが回ってくることになる。
 (ファクトチェック班・池田哲平)
琉球新報 

発信者情報開示請求事件の判決文 
http://www.ben.li/article/yomekai.html  

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