20190214 徳島

 JR四国の路線別収支状況が13日、関係者への取材で分かった。営業係数(100円の収入を得るためにかかる経費)は、全20線区のうち牟岐線の牟岐―海部間が最も悪く、徳島県内の6線区がワースト10に入った。

 本州と四国を結ぶ本四備讃線(瀬戸大橋線)を除く19線区が赤字で、厳しい経営状況が改めて浮き彫りになった。資料は、3月をめどにJR四国などが開く会合で示される予定で、地域の鉄道網の維持に向けた議論に活用される。

 営業係数(2013~17年度平均)は100を超えると赤字を意味し、数値が大きいほど採算性が悪い状況を示す。牟岐―海部間が1658、予土線が1159で、この2線区が100円の収入を上げるためのコストが1000円を超えた。

 徳島県内では、牟岐線の阿南―牟岐間が551で3番目、鳴門線が320で5番目、徳島線が218で7番目、牟岐線の徳島―阿南間が183で9番目、土讃線の琴平―高知間が175で10番目に悪かった。

 JR四国全線では営業収益(13~17年度平均)が248億3800万円、営業費は357億7700万円で109億4千万円の赤字となり、営業係数は144だった。国土交通省の資料によると、四国内の乗り合いバス12事業者の15年度の営業係数は115で、JR四国の経営状況はより深刻となっている。

 路線別収支は、赤字路線の将来像を探るため、JR四国などが3月にも開く「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会II」の第4回会合での提示が予定されている。昨年3月の第2回会合で公表予定だったが、「赤字路線の廃止といった混乱を招く」として見送った。

 その後、7月の西日本豪雨で路線に被害が発生し、同社の半井真司社長が「年1億円も収入がないような路線で数十億円の復旧費を出すのは厳しい」「災害で厳しくなるタイミングが早まったと言わざるを得ない」と述べるなど、将来予測がより不透明となったことを受け、関係者との情報共有を目的に、公表の方針に転じた。
徳島新聞 2/14(木)

阿波踊り 大赤字
地方を滅ぼす「本当の敵」は常に「外」にいる――「イベント地獄化」した阿波踊り

 ◇徳島は「阿波おどり」で揉めてさらに衰退する

 徳島の夏の風物詩、「阿波おどり」が大混乱のうちに幕を閉じました。いろいろな意味でメディア露出は多かったにもかかわらず、4日間での人出は減少して約108万人。昨年より15万人減少しました。

 確かに日取りも悪かったものの、「主催者団体の巨額累積赤字」だけでなく「徳島市観光協会の破産」と来て、さらには全員参加でフィナーレとして行う総踊りについても「やる、やらない」を、祭りの当日まで引きずってしまったため大混乱となりました。

 大混乱を招いた原因についてはすでに「徳島の阿波踊りが『イベント地獄化』した理由」で触れたとおりですが、「地域内の泥仕合」に本当に飽き飽きした方も多かったのではないでしょうか。
 一時が万事、今回の阿波おどりの混乱は徳島市の現在の状況を象徴する出来事であり、衰退地域によくある構造とも言えます。

 ◇「地域の衰退→行政の予算化→利権争い」の構図

 そもそも祭りは、本来であれば「稼ぐ地域産業」があり、その「地域産業による余剰を地域内で循環させるための行事」といった側面が強くあります。大抵の伝統行事は神事と絡んだものです。そのなかでも華やかな祭りには「その地域の経済力が増した時代に発展したもの」が多くあります。

 しかしながら栄華を極めた地域産業が衰退していくと、「不採算だけど伝統行事だから」ということで行政が予算を出すようになり、祭りに関連する利権で稼ごうとする人が暗躍します。阿波おどりも例外ではありません。長い歴史の中で形成されてきた、さまざまな利権の所在をめぐって互いに争っているわけです。

 今回の「総踊りをめぐる小競り合い」も、ある意味の茶番です。徳島市の思惑はこうです。
 阿波おどり事業で過去の赤字責任を事実上認めて3億円の寄付を行った徳島新聞を、運営の中核に置きつつ、新たな「分散会場での手法で稼ごう」とするのが本心なのに、表向きは「安全のため」という建前で「総踊り中止」で押し切ろうとしました。

 対立している踊り手団体である「阿波おどり振興協会」側も、「いやいや、ダイナミックな総踊りを市民は望んでいる」、などといって「総踊り」を独自に決行しましたが、不明瞭な運営が指摘され、破産した徳島市観光協会との関係がチラついたままです。

 表向きは権力側と市民側の対立のようにメディアは描いていたものの、実際のところはどっちもどっちというところです。
 こうした「しょうもない対立」に、市民や観光客など多くの人が飽き飽きとしたことが動員数の伸び悩みにつながったことは否めないでしょう。