エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領
【3月5日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は4日、欧州の将来に対する展望を述べた意見記事の中で、旅券なしでの自由な往来を認めるシェンゲン協定(Schengen Agreement)適用圏(シェンゲン圏)の改革と、「民主主義を保護するために」サイバー攻撃や偽ニュース対策を扱う新機関の設置を提案した。
マクロン氏は、独紙ウェルト(Die Welt)や英紙ガーディアン(Guardian)、スペイン紙パイス(El Pais)、伊紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Serra)といった欧州の大手新聞に掲載される意見記事を公開。
この中で、欧州連合(EU)が自らを守り、その基本的価値観である民主主義をいっそう厳密に順守するためとして、シェンゲン協定適用圏の改革や新機関設置など可能だとする取り組みをいくつか挙げた。
また安全保障協力のさらなる強化を再び訴え、移民危機に対処するための共通した難民政策の必要性も強調した。
また安全保障協力のさらなる強化を再び訴え、移民危機に対処するための共通した難民政策の必要性も強調した。
マクロン氏はさらに「ヘイトスピーチ(憎悪表現)や暴力的な言論をインターネットから排除するため」の禁止法への賛同を求めた。欧州の政党が圏外から資金を得ることも禁止されるべきだと述べた。
欧州では民衆の不満が高まっているが、マクロン氏はこれを抑えるためにEU圏内における最低賃金引き上げについても提案。同時に、米国や中国などの競合国と同様、欧州も自らのビジネス利益をもっと追求すべきだと指摘した。(c)AFP
2019年3月5日 16:21 AFP
※欧州連合(EU)ではマーストリヒト条約によってEU市民に域内の「自由な移動」が認められ、シェンゲン協定締約国の間では第三国人(非EU市民)を含む「人の移動」が自由化されている。
しかし域内国境での検問が廃止されれば、犯罪者やテロリストが国境を越えて活動する危険が高まりかねない。
また第三国人が域内を自由に移動できるようになれば、域外国境(シェンゲン協定締約国と第三国との国境)の管理を共通化する必要がある。
そこで「人の自由な移動」への対応として一層の刑事警察協力が求められることになった。
「シェンゲン情報システム(SIS: Schengen Information System)」は、シェンゲン協定締約国間の刑事警察協力を促進するために設置された情報共有ネットワークであり、四億人を越える人々が居住する「国境のないヨーロッパ」の安全を担保する措置として運用されている。
同時にSISは「自由・安全・公正(Freedom, Security and Justice)」の領域としてのEUの「不可欠な要素」 ともされる。
シェンゲン協定および同実施条約は1998年に発効したアムステルダム条約によってEUの枠内に取り込まれている。