住民基本台帳法違反

 ◇「遺産分割調停申立」と嘘の利用目的を記入して 「職務上請求書」を請求

 弁護士の男が、福岡県内に住む男性の住民票を不正に取得したとして、福岡県警は近く、この弁護士を書類送検する方針であることがわかりました。
 捜査関係者によりますと、東京第一弁護士会に所属する72歳の弁護士の男は、2017年2月、糟屋郡志免町に住む男性(30代)の住民票を、不正に取得した疑いがもたれています。

 住民票を請求された被害者の男性は以前、東京第一弁護士会に、この弁護士の男の懲戒請求をしていました。
 警察の調べに対し、弁護士の男は容疑を認めた上で、「懲戒請求した人の身元を知りたかった」という趣旨の話をしていて、警察は近く、住民基本台帳法違反の疑いで書類送検する方針です。今年2月、志免町(しめまち)役場が警察に告発したことで、事件が発覚したということです。
九州朝日放送 3/8(金)

 ◇弁護士は2016年に原告男性から守秘義務違反で懲戒請求されていた

 住民基本台帳法は、偽りなど不正な手段で住民票の写しの交付を受けることを禁じ、違反した場合は30万円以下の罰金が科される。弁護士は今回の取得について、「違反するでしょうね」との認識を示した。

 男性側によると、弁護士は2017年2月、男性の住民票の写しを手に入れるため、業務で取得する際に必要な「職務上請求書」を福岡県内の自治体に提出。利用目的の欄には「遺産分割調停申立」と記入したが、男性が相続人となって遺産分割が行われる事実はなかったという。

 弁護士は09年11月に発覚した島根女子大生殺害事件で、交通事故死した容疑者の別の事件で弁護人を務めた。その立場からテレビ局の取材に応じ、容疑者の印象などを語る様子が16年12月に放送された。番組を見た男性は、内容が「弁護人の守秘義務に違反するのでは」と考え、第一東京弁護士会に懲戒請求していた。

 弁護士は取材に対し、住民票の写しの取得を認め、「懲戒請求をした人が事件と関係のない赤の他人だったので、どうして請求したのか分からず、身元を知りたかった。興信所に依頼したら大変な金がかかる。こちらにも防御権がある」と話した。

 男性は、自治体に自身の個人情報に関する開示請求をする中で、弁護士が提出した職務上請求書の開示を受け、自身の住民票の写しが交付されたことを知ったという。18年10月に「プライバシーが侵害された」として、慰謝料など176万円の支払いを弁護士に求め、福岡地裁に提訴した。

 第一東京弁護士会は「事実関係を把握していない。懲戒請求については、有無も含めてコメントできない」としている。(一條優太)
朝日新聞デジタル 2019年1月17日