MRJ
「MRJ」=2018年7月、英ファンボロー、寺西和男撮影

 三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)は事業方針を大幅に見直す。
 初の国産ジェット旅客機として開発している座席数90の「三菱リージョナルジェット(MRJ)」事業を事実上縮小。
 代わりに最大市場の米国の需要に合う一回り小型の70席の機種を開発する。
 90席モデルの受注先の切り替えにも応じるが、納入時期や資金回収の遅れにつながる可能性がある。
日本経済新聞 2019年5月28日

 ◇MRJの設計変更、6月に完了へ 初号機引き渡し2020年

 国産初のジェット旅客機MRJを開発する三菱航空機(愛知県豊山町)の水谷久和社長は16日、機体の設計変更を6月末までに完了させる考えを示した。当初の見通しより作業が複雑で時間がかかっていたが、完成のめどがたったという。新たな試験機をつくって米国での飛行試験に臨む予定だ。

 この日、名古屋市内で記者会見を開いて明らかにした。

 設計の変更は、安全性を高めるために計器類や電線の配置を改めるもので、当初は2017年秋に終える見通しだった。しかし、電線の配置を見直す作業が複雑で手間取った。
 そのため、同時進行で試験機も製造してきた。水谷氏は新しい試験機について、「なんとか早く完成させて飛行試験につなげたい。第2四半期(4~6月)あたりに試験に組み込むことになりそうだ」と述べた。

 MRJは08年に三菱重工業が開発を始めたものの、作業が難航。13年を予定していた初号機の引き渡し時期は5度延期され、現在は20年半ばを目指している。

 今年3月からは、国土交通省が安全性を証明する「型式証明」を得るための飛行試験を米国で受けている。ただ、これは設計変更を行う前の試験機。型式証明を取得するには、設計変更後の機体を使う必要がある。そのため、三菱航空機は新たな試験機をつくり、安全性が確認でき次第、米国に持ち込む。(初見翔)
朝日新聞デジタル 2019年4月16日

        *

◆関連記事
【MRJ】三菱航空機、反競争的行為を行ったとしてボンバルディア(カナダ)を反訴 →ボンバルディアの元社員が、航空機認証に関する秘密文書とデータを持ち出したことが商取引上の秘密保護を定めた法律に抵触するとの見解

【MRJ】日本航空業界悲願の国産初ジェット旅客機、英国の航空ショーで10分間のデモ飛行 性能アピール →生産にあたって、トヨタ自動車の生産方式を導入して量産体制の確立を目指す

ジェット旅客機「MRJ」量産体制確立へ トヨタ系と新会社設立 →燃費と居住性の両立。従来機より20%の燃費向上
 → 在庫を極力持たない「かんばん方式」や、不具合があった時にラインを緊急停止して不良品を抑える「あんどん」などトヨタ生産方式を取り入れる。

【MRJ】量産遅れ、570人の配置転換 三菱重工が方針 →度重なる設計変更で量産開始が遅れ、人員に余剰感が出ているため

国産ジェットMRJ“初号機”納入、最大2年延期(5度目) →「2018年の納入予定」から最大2年延期

【国産旅客機】MRJ初号機の納入見送り 不具合検証で試験機に転用 →補強材の追加による重量増加、要設計修正

【MRJ】初の国産旅客機【Debut2016】(動画あり) →三菱重工業が事業推進