船戸雄大 優里 結愛
優里被告は、なぜ結愛ちゃんを雄大被告から守ってやれなかったのか

◇「いきがくるしくなるまでうんどうをする」 部屋中に貼られた「決まり事」の紙

 《東京都目黒区(東が丘一丁目14-3サンハイム好2階)で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里被告(27)の裁判員裁判の初公判は、休廷を挟んで検察官による証拠調べが続く。再度法廷に入った優里被告は、まだ息が苦しいのか、斜め下を見つめながら空気を求めるように何度も口を開閉させた。弁護人から資料を見せられながら何らかの説明を受けると、うなずいていた》

 ■検察官が書証(証拠書類)の説明

 検察官「請求した書証の一部を調べていきます」

 《法廷が再開され、検察官はモニターを使いながら優里被告や夫の雄大被告(34)、結愛ちゃんが暮らしていた目黒区のアパートの外観や内部の様子を撮影した写真を示していく。優里被告はアパートの外観がモニターに写し出されると、中空を見つめながら涙を流した》

 《写真は事件発覚の翌日に撮影されたもので、散らかった部屋の中や消防隊が救命措置をする際に動かしたラックなど、生々しさを残す》

 ■浴室、トイレの状況

 検察官「浴室とトイレの状況です」

 《検察官は玄関を入ってすぐ右手にあるトイレと浴室の写真をモニターに写し出す。拡大するとトイレと浴室の間の壁や床に黒っぽい点がいくつか写っている》

 検察官「血痕です。一部は被害者(結愛ちゃん)のDNA型と一致しています」

 《検察官は結愛ちゃんが主に使っていた6畳間の説明に移る。部屋の中央には布団が敷かれ、ベランダに面したところにはテレビ。テレビの周りや、衣類かけの周りにはたくさんの張り紙があった》

船戸結愛 享年5歳
5年間の短い生涯

 ■テレビ周辺の張り紙

 検察官「テレビの中央や下には段ボール紙が立てかけられています。下に立てられているものには九九が書かれています」

 《5歳児にはまだ難しいであろうかけ算の九九が手書きでびっしりと書き込まれていた》

 検察官「テレビの脇に立てかけられた段ボールにはこのように書かれています」

 検察官「あさおきてからすること めざましどけいをはやくとめる しずかにどあをしめる しずかにあるく てをせっけんであらう うがいをする かおをあらう たいじゅうをはかってじかんをかく いきがくるしくなるまでうんどうをする 4じになったらたいじゅうをはかる ねるまえにハミガキをしてたいじゅうをはかる…」

 《モニターに写し出される「決まり事」は細部にわたり、結愛ちゃんには守らなければならない「約束」が大量にあったことをうかがわせる》

 検察官「テレビ台には、紙で作られた時計も置かれていました。時計の読み方を勉強している内容が書かれていて、ノートも置かれていました。ノートについては明日、取り調べます」

 検察官「テレビの右側には張り紙があります。そこにはこう書かれています」

 検察官「●かけざん まちがえずにつまらずにいえるようにれんしゅうする あさはちいさいこえでれんしゅうする よむだけではダメ!」

 検察官「●とけい 1ふん、5ふん、15ふんとばしでもまちがえずにいえるようにれんしゅうする」

 ■その他の張り紙

 《部屋の角には結愛ちゃんのものとみられる洋服をかける衣類かけが置かれており、その周りにもびっしりと張り紙があった》

 検察官「うそをつかない ごまかさない てきとうなことをいわない にこにこえがおで なにかをするときとおわったときはとけいをかくにんしてなんふんかかったかかぞえる」

 検察官「この紙には血痕があり、DNA型は被害者のものと一致しました。続いて別の張り紙です」

 検察官「おべんきょうとうんどうをはじめるまえに ゆあはいっしょうけんめいやるぞ!といってやるきをだす わすれずに? おわったらゆあはできたぞ!という」

 《異様な張り紙の説明を終え、検察官は部屋の中央のテーブルや布団の説明に移る》

 検察官「テーブルには未使用の紙おむつ、四角形の缶に紙片があり、かごの中や下にも紙片がありました。この紙についても明日取り調べます」

 検察官「布団の周りには薬があり、花粉症やアレルギー性鼻炎用のものとの記載がありました。ペットボトルやあめも置かれ、経口補水液やブドウ糖のあめが一部なくなっていました。はちみつ100%のあめもあったが、未開封でした」

 《検察官の説明は変色した掛け布団や枕カバーなど、結愛ちゃんの日用品に移る。結愛ちゃんが小学校で使うはずだったランドセルは、ハンガーラックの段ボールの中から見つかった。段ボールであふれたハンガーラックには、入学のしおりも手つかずのままで入っていた》

 《結愛ちゃんが1人で生活していたとみられる6畳の部屋は、天井の照明もないまま。優里被告らが生活していた4畳半の部屋のベランダにはビニールが張られ、目隠しのようになっていた》

 《午前の審理が終わり、退廷のため立ち上がった優里被告は、おぼつかない足取りで法廷を後にした》


母親初公判詳報(1)
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