◇「余命三年時事日記」主催者の情報開示を請求した控訴審の判決内容

情報開示請求 控訴審判決

■本訴訟の争点
1 権利侵害の明白性
(1)懲戒請求者らに懲戒請求を呼びかけた本件投稿者は不法行為責任を負うか?
(2)懲戒請求の呼びかけを内容とする本件投稿により控訴人(=佐々木亮)の被った精神的苦痛が受忍限度を超えるか?
(3)投稿は名誉毀損か?

2 情報開示を受けるべき正当理由の有無

<裁判所の判断>
事案に鑑み1‐(2)から判断。
懲戒請求を呼びかける行為が不法行為上違法な権利侵害行為といえるかについては、呼びかけられた弁護士の被った精神的苦痛という人格的利益と懲戒請求をするよう呼びかける表現行為との調整の問題であるから、呼びかけ行為の趣旨、態様、対象者の社会的立場及び対象者が被った負担の程度等を総合考慮し、

対象者の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるといえる場合には、そのような呼びかけ行為は不法行為法上違法の評価を受けると解するのが相当である。
(最高裁判例=H23.7.15を引用)

本件投稿の内容は控訴人が会長声明に賛同し、その活動を推進しているというものであるところ、朝鮮学校に対する補助金の交付の適否に関して様々な見解が述べられていることは公知であるが、

少なくとも、補助金支給に向けた活動をすること一般が憲法及び何らかの法令に反するものではなく、弁護士としての品位を損なう行為でもないことは明らかであって、同活動に関する会長声明やそれに賛同する行為についても表現行為の一環として、法令や弁護士倫理に反するものではないことは明らかである。

懲戒請求のひな型
(ブログ主から読者に郵送された懲戒請求のひな型)

それにもかかわらず、H29.6.15、控訴人を含む10名の弁護士につき190名から懲戒請求書が送付され、これらにはひな形と同一の懲戒事由が記載されており、その後も控訴人について同内容の懲戒請求が相次ぎ、同年10月ころまでには少なくとも1000名を超える請求者から懲戒請求書が送付され、

同年9月2日に控訴人がツイッターに懲戒請求者らに向けた記事を掲載すると、同月11日には控訴人を対象弁護士とする本件投稿と同一の懲戒事由による懲戒請求がさらに100件ほど申し立てられ、

H30.5までに、控訴人について送付された懲戒請求書は3000件に及んだことが認められ、本件投稿による呼びかけに呼応した多数の懲戒請求者により控訴人が多大な精神的苦痛を被ったことは否定することができない。

また、本件投稿の趣旨は、朝鮮学校に対する補助金の支給に反対する自己の考えを踏まえて、朝鮮学校に対する補助金の支給を求める会長鮮明に賛同し、活動を推進する行為を違法行為ないし犯罪行為であり、懲戒事由に当たるものとして、控訴人に対する懲戒請求を呼びかけるものであり、不特定多数の者に懲戒請求を呼びかける行為により自己の考えと反対の立場の主張や表現行為それ自体を封じ込める意図が窺がわれるものである。

懲戒請求者の名前は伏されるというデマで扇動
(ブログに書かれたデマを真に受けた読者約1000人が懲戒請求)

そして、本件投稿の態様も、懲戒請求書のひな型の形式を掲載し、これに懲戒請求者の氏名・住所を書きこめば簡単に控訴人に対する懲戒請求書が作成できる体裁のものであり、控訴人に対する懲戒請求を強く誘引する性質のものというべきである。

また、本件投稿者は、以前から本件ブログの投稿を通じて在日韓国人や在日朝鮮人に関する問題を取り上げ、繰り返し多数の意見を表明し、複数の書籍が出版されていることや、呼びかけに応じて多数の懲戒請求がなされたことからすると、社会的影響は同調する者を中心に少なからずあったと認めるのが相当。

これらを総合すると、控訴人に対する懲戒請求が最終的には本件投稿における呼びかけに応じた各懲戒請求者の判断によるものであるとしても、懲戒請求を呼びかけた発信自体が、ひな形どおりの多数の懲戒請求がされたことの不可欠かつ重要な原因になったというべきである。

以上の事情を総合すれば、控訴人が弁護士であり、その資格や使命に鑑みて様々な意見や批判を受けるべき社会的立場にあるとしても、本件投稿の発信自体によって控訴人の被った精神的苦痛は社会通念上受忍すべき限度を超えたものであると評価することができる。

争点1‐(3)について (中略)一般の読者の普通の注意と読み方を基準として本件投稿を読んだ場合、摘示された事実及びこれを前提とする意見の表明によって、一般人においては、控訴人が違法行為ないし犯罪行為に加担したり、懲戒処分に値する非違行為(非行・違法行為)を行ったりしたという否定的な印象を抱く。

したがって、本件投稿は、弁護士である控訴人の社会的評価を低下させるものであることが認められる。

朝鮮学校に対する補助金の支給に賛成したこと自体は社会的評価を低下させないという被控訴人の主張は、会長声明を「違法」、これに賛同し、推進する行為は「確信的犯罪行為」、上記行為が「懲戒事由」という否定的な表現を強く用いている以上、朝鮮学校に対する補助金の支給に向けた活動に関する会長声明及びこれに賛同し、活動を推進する行為自体が何ら法令や弁護士倫理に反するものではないからといって、

およそ控訴人が違法行為ないし犯罪行為に加担したとか、懲戒処分に値する非違行為を行ったものと一般の読者に受け止められることがないとはいえず、本件投稿は控訴人の社会的評価を低下させるというべきである。被控訴人の主張は採用できない。

争点2(情報開示を受けるべき正当理由の有無)については正当な理由があるというべき。

以上の次第で、争点1‐(1)並びに「本件投稿2」の争点1‐(3)・争点2を判断するまでもなく、控訴人の情報開示請求は理由があるから認容すべきところ、これを棄却した原判決は失当である。
よって、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、控訴人の請求を認容し、主文のとおり判決する。

おわり。

ちなみに「本件投稿2」は、一審で負けたので、高裁で負けないようにするために、より堅い(違法性が認められやすい)投稿を請求原因に追加して主張していましたが、元々の投稿(懲戒請求を呼びかける投稿)で勝てました。
午後8:09 · 2019年10月29日 


◆関連記事
【大量懲戒請求事件】余命ブログの発信者情報の開示命令判決 佐々木亮弁護士、高裁で逆転勝訴 →懲戒請求者の民事責任は序盤戦、最終目標はブログ主の刑事責任

【余命三年時事日記】ブログ運営者の情報開示を命令 
 →「原告(小倉秀夫弁護士)の社会的評価が低下したことは明らか」東京地裁