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◆プロパガンダ工作企業に潜入した記者「どのようにして世論を形成するのか」

 ポーランドのインターネットプロパガンダ工作企業「Cat@Net」に6カ月間の潜入取材を行った記者が、「架空のSNSアカウントを作成し、左翼と右翼の両方になりすまして世論を形成する」といった、プロパガンダ工作の実態を明らかにしています。

Undercover reporter reveals life in a Polish troll farm | World news 
The Guardian

 ◇虚構の現実化によって虚構が現実を侵食、集団参加型の代替現実へ

 ポーランドのジャーナリストに関するNGO団体Reporters Foundationに所属するKatarzyna Pruszkiewiczさんが6カ月間の潜入取材を行ったのは、ソーシャルメディアを中心として企業・個人・公共機関のイメージを構築する事業を手がけるというPR会社「Cat@Net」です。

 Pruszkiewiczさんによると、Cat@Netの社員は上司の指示に従って「右翼向け」と「左翼向け」、それぞれのアカウント計12個を巧みに使い分けていたとのこと。

架空のアカウントを作成し、右翼と左翼の両方になりすまし世論形成

 ◇対立させて戦わせ、両方から信頼度を稼ぎ、注目度を上げる手法

 右翼向けと左翼向けの両方のアカウントを用意する理由は、右翼向けアカウントと左翼向けアカウントで議論を戦い合わせることで、右派・左派それぞれを支持するユーザーの信頼と注目を集められるからだそうです。

 そうして獲得したユーザーを誘導することで、Cat@Netは右派・左派両方の顧客の要望に応えていました。

 実際にPruszkiewiczさんが請け負った業務の1つが、極端な右派的発言やマイノリティグループに対するヘイトスピーチで批判が殺到していたポーランドの公共テレビ局「ポーランド・テレビ(TVP)」に有利な世論を形成するというもの。

 Pruszkiewiczさんが上司から受けた業務指令は、「TVPに対する政府の補助金とテレビのライセンス料に関して肯定的な意見を投稿する」というものだったそうです。

tvp

 Cat@Netの恩恵を得ていた左派グループも存在します。この一件を報じているThe Guardianによると、2018年6月頃、Cat@Netの左翼向けアカウントは、ポーランドの社会民主主義政党である民主左翼連合の議員が欧州議会に立候補することを応援するメッセージをSNSに投稿していたことが判明しているとのこと。

 さらにこの応援メッセージはCat@Netの右翼向けアカウントから批判を浴びており、ここでも「右翼向けアカウントと左翼向けアカウントを戦い合わせて、右派と左派両方のユーザーからの信頼度を稼ぎ、注目度も上げる」という手法が使われていることがわかります。

 また、このほかにもCat@Netは「アメリカ製のF-35ではなく、ポーランド企業のPZLŚwidnikが製造過程に携わるユーロファイター タイフーンを発注する」という政策を支持するように世論誘導を行っていたこともわかっているそうです。

 この世論誘導において、上司からは「F-35をおとしめるのは良いが、ユーロファイター タイフーンを推しすぎないように。さもないと一般ユーザーに、何者かが世論誘導を行っていると察知されてしまうから」という指示を受けていたそうです。

世論誘導

 ◇大半のネットユーザーは世論誘導されていることに気づいていない

 このようにさまざまな世論誘導を行っていたCat@Netですが、一方で、Cat@Netの顧客は「架空のアカウントによって世論誘導が行われていたことを知らない」可能性もあるとのこと。

 流出した内部文書によると、Cat@Netは他のPR会社の下請けを行っている場合が多く、Cat@Netに業務発注を行った企業が独断で「架空アカウントによる世論誘導」を指示した可能性があるためです。

 虚偽情報に関する専門家であるPeter Pomerantsev氏は、「この種の問題に関する規制をどのようにするかが課題」と指摘し、「Cat@Netの事業は、ヘイトスピーチでも、暴力を扇動するものでも、戦争プロパガンダでもないため、規制が困難です」と語っています。

架空の世界

 また、Cat@Netの従業員の大半は障害者で、Cat@Netは2015年11月以降に150万ズウォティ(約4200万円)以上の公的な補助金を得ているとのこと。

 このことについてPruszkiewiczさんは、「障害を持つ従業員の大半は慈悲深く、慈善活動に従事する善良な人々ですが、障害ゆえに雇用機会が限られています。
 彼らにとってCat@Netの業務内容は、『単なる仕事』に過ぎません」とコメントしています。
Gigazine 2019年11月06日

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