デービッド・アトキンソン 菅義偉
■デービッド・アトキンソン
「国際金融資本の代理人」、「日本に巣食うグローバリストの見本」と呼ばれている人物。観光庁や観光業界に肩入れするような記事や講演で有名。日本を観光立国とする長期戦略を提唱し、二階俊博氏、菅義偉と強いパイプを持つ。
 中小企業を批判、「日本の企業を半減させ、別の大企業に統合させて生産性の向上を図るべき」と公言。「(アトキンソンは)デジタル化で日本の富を根こそぎ奪おうとしている」と警鐘を鳴らす経済評論家も少なくない。

◆2020年1-8月「休廃業・解散企業」動向調査(速報値)

 2020年1-8月に全国で休廃業・解散した企業は3万5,816件(前年同期比23.9%増、速報値)だった。このペースが続くと、年間5万3,000件を突破し、2000年に調査を開始して以降で最多だった2018年(4万6,724件)を大幅に上回る可能性が出てきた。

 「平成28年経済センサス-活動調査」の国内の企業数(規模問わず)は約358万社で、単純計算で1.0%が2020年1-8月に市場から撤退・消滅したことになる。

 東京商工リサーチが8月28日~9月8日に実施したアンケートでは、コロナ禍が長引いた場合に廃業を検討する可能性が「ある」と回答した中小企業は8.8%、全企業では7.5%だった。
 廃業を検討する可能性がある中小企業のうち、44.4%が検討時期を「1年以内」としており、1-8月の休廃業・解散の増加は「大廃業時代」が現実味を帯びてきた可能性を示している。

 政府や自治体はコロナ禍で矢継ぎ早に資金繰り支援を打ち出し、2020年1-8月の倒産は5,457件(前年同期比0.2%減)と抑制効果をみせている。

 だが、資金繰り破たんの回避に重きを置いた支援は企業継続の将来性を必ずしも担保していない。支援効果の息切れが懸念されている約半年を経過し、転業や廃業、事業譲渡を含めた新たな幅広い支援パッケージが求められている。

※東京商工リサーチが保有する企業データベースから、「休廃業・解散」が判明した企業を抽出した。
「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で事業活動を停止した企業と定義した。
※2019年(年間)「休廃業・解散企業」動向調査は、2020年1月22日発表。

 ◇1-8月は前年同期比23.9%増、年間で過去最多を更新する勢い

 2000年に調査を開始してから、休廃業・解散数が最も多かったのは2018年の4万6,724件で、2019年は4万3,348件(前年比7.2%減)だった。各都道府県の事業承継ネットワークを通じた事業承継診断を含むプッシュ型支援の展開や民間での取り組み強化などが、2019年の休廃業・解散数の押し下げに繋がったとみられる。

 だが、2020年1-8月の休廃業・解散は速報値で3万5,816件(前年同期比23.9%増)と、一転して大幅に増加した。
 事業承継が円滑に進まない中、2020年2月から感染が拡大した新型コロナウイルスで急激な業績悪化に陥り、先行きが見通せないまま事業継続の意欲を喪失した企業、経営者が増えた状況が透けてみえる。

2020 休廃業・解散、倒産件数

 ◇産業別 サービス業他は1万件超え

 2020年1-8月に休廃業した3万5,816件を産業別でみると、トップはサービス業他の1万1,144件(構成比比31.1%)だった。

 建設業が6,327件(同17.7%)、小売業が4,511件(同12.6%)、製造業が3,848件(同10.7%)、卸売業が3,414件(同9.5%)と続く。

 増加率でみると、金融・保険業が前年同期比45.9%増(1,185件)。以下、建設業の27.9%増、サービス業他の27.4%増、運輸業の22.9%増(595件)と続く。

 ◇業種別 上位は金融商品取引業やNPO法人

 3万5,816件を産業を細分化した業種別でみると、母数500件以上で増加率が最も高いのは、「金融商品取引業,商品先物取引業」で、2019年1-8月より67.2%増の756件だった。このうち、303件は合同会社で300件が解散だった。コロナ禍での先行き見通し難から会社清算を選択したとみられる。

 次いで、「政治・経済・文化団体」で、2019年1-8月より52.8%増の1,813件だった。このうち、1,535件を特定非営利活動(NPO)法人が占める。
 NPO法人は、経営基盤が整っていない法人も多く、コロナ禍が直撃した可能性がある。4位の「専門サービス業」(前年同期比34.1%増、1,970件)の内訳は、経営コンサルタント業が909件(構成比46.1%)、デザイン業が151件(同7.6%)など。
 飲食店は、前年同期比13.4%増の1,221件だった。

2020「休廃業、解散」増加率上位15

 ◇休廃業・解散増加率上位15業種(1-8月)

 2020年1-8月の休廃業・解散が、大幅な増勢ペースをたどっていることがわかった。この勢いを持続した場合、年間では5万3,000件を超え、集計開始後、初めて5万件を突破する可能性が出てきた。

 政策的な支援効果で、2020年1-8月の企業倒産は落ち着いて推移し、当初の見込みを下回り、年間8,000~1万件で着地する公算だ。
 だが、増勢をたどる休廃業・解散を加味すると、2020年は倒産や休廃業・解散により市場から撤退する企業は、2000年以降で過去最多だった2018年の5万4,959件を大幅に更新し、初めて6万件を超える事態も想定される。

 倒産や休廃業・解散は、市場の新陳代謝の一環とも言えるが、地域経済の根幹を支える企業数の減少は、雇用や消費など経済的に大きな影響を及ぼす。

 また、こうした企業に長年勤続してきた従業員の転職が容易に進むとは限らない。巷間、雇用の流動化による人手不足の解消がいわれるが、人としての個性、適性などを考慮すると、こうした議論が正しいとは限らない。

 コロナ禍の長期化が予想されるなか、休廃業・解散の増加は避けられないだろう。再チャレンジ支援と同時に、年齢的に引退の時期を迎えた高齢の経営者や従業員への支援など、経済政策と社会福祉を絡めた、複層的な議論が必要になっている。
東京商工リサーチ 2020.09.23



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中小企業基本法

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