吉村知事
吉村洋文知事「(住民投票は)三度目はない」

■賛成「67万3255」 反対「68万6008 」(開票率99.1%)

 ◇13年以降、都構想関連に公金100億円超 人件費や選挙など

 地域政党「大阪維新の会」は2010年に結党して以降、党最大の公約に掲げた「大阪都構想」の実現を目指してきた。制度設計を担う大阪府と大阪市の共同部署「大都市局」が設置された13年4月以降、都構想関連の事務には少なくとも100億円を超える府市の公金がつぎ込まれ、多くの職員も投入された。
毎日新聞 2020年11月1日

パソナと維新の癒着
大阪維新の会と大口支援者パソナ(竹中平蔵)の露骨な癒着

 ◇「大阪市廃止・分割構想」反対多数 大阪市存続へ!

 大阪市を廃止して四つの特別区に再編する大阪都構想の是非を問う住民投票が1日行われ、反対多数が確実となった。前回2015年に続く否決で大阪市存続が決まった。大阪維新の会代表の松井一郎市長は23年4月の任期満了で政界引退を表明する方針だ。当日有権者数は220万5730人、投票率は前回を4・48ポイント下回る62・35%だった。

 住民投票では、人口約270万人の大阪市を約60万~75万人の四つの特別区に再編する制度案への賛否が問われた。大阪市が持つ都市開発やインフラ整備などの権限を大阪府に一元化し、特別区は教育や子育て支援など身近な住民サービスにあたる構想。今回の否決で都構想は廃案となった。

開票速報

 反対派の自民党と共産党などは、特別区の財政収支見通しに新型コロナウイルスの経済への影響が反映されていないことなどを問題視。特別区が収支不足に陥り、住民サービスが低下する恐れがあるとして、政令指定市としての大阪市の存続を訴えた。賛成派の維新と公明党は、府と市の権限が重なり合う「二重行政」の解消が経済成長につながり、特別区への再編で住民サービスも充実できると訴えてきた。

 松井氏は今回否決されれば、3度目の住民投票はないと明言してきた。市長の任期満了をもって政界を引退する考えも示してきた。そのため、維新は今回の否決で看板政策の都構想と党のリーダーを同時に失うことになる。

 松井氏は菅義偉首相との関係が良好で、代表を務める国政政党・日本維新の会は政権に協力的な姿勢もとってきた。今回の結果が国政にも影響を及ぼす可能性がある。

 都構想の是非を問う住民投票は2度目。前回は反対70万5585票、賛成69万4844票の約1万票の僅差(きんさ)で否決され、当時の維新代表で大阪市長だった橋下徹氏が政界を引退した。前回と異なり、公明党が賛成に転じて山口那津男代表が大阪入りして維新と街頭演説に立つなどテコ入れを図ったが、改めての否決となった。

松井一郎
松井一郎市長「任期満了で政界引退」

 ◇「大阪都構想」投票率62.35% 前回の住民投票から4ポイント下回る

 2度目になった住民投票の投票率は62・35%だった。僅差で否決された5年前の住民投票に比べて約4ポイント下回ったものの、投票権を持つ大阪市民の高い関心を集めた。

 10月13~31日に実施された期日前投票をした人は41万8925人に上った。前回より約6万人多く、過去に市内であった期日前投票の中で最多だった。市選管が新型コロナウイルスの感染予防対策の一環で期日前投票の積極活用を呼びかけたことが影響したとみられる。全投票者数(137万5313人)の約3割を占め、投票率を押し上げる形になった。今回は18~19歳の投票も可能になった。

 大阪市内全域の有権者を対象にした地方選と比較すると、過去最高だった1951年の市議選(71・98%)には届かなかったが、大阪府知事選とダブルで実施された2011年11月の市長選(60・92%)など、都構想が争点だった選挙とも同様に高い水準になった。

 最近の住民投票関連では、18年11月に兵庫県篠山市(当時)が「丹波篠山市」への市名変更の賛否を問う住民投票の投票率が69・79%だった。こうした条例に基づく「諮問型」の住民投票とは異なり、今回は大都市地域特別区設置法に基づき、結果が法的な拘束力を持つことも有権者の関心を高めた要因になったとみられる。【野口由紀】
毎日新聞  2020年11月1日

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