沖縄県八重山地区(石垣市、与那国町、竹富町)の中学公民教科書採択問題で、再三の国の指導を県教委が聞き入れない状態が続いている。教科書採択制度を脅かすルール破りであり、いつまでも放置してはおけない。国は是正など強い指導で臨み、県教委はそれを受けいれて、一刻も早く事態を収めるべきである。

 八重山採択地区協議会は、国家や領土の記述を充実させた育鵬社版を答申した。現行ルールに則(のっと)った決定である。

 石垣市と与那国町はそれに従って採択したが、竹富町は東京書籍版を採択した。
 そのため、3市町の教育委員全員の協議が県主導で開かれ、育鵬社版は逆転不採択とされた。
 国は協議を無効として、事実上、育鵬社でまとめるよう求めている。

 問題は、県教委がそれを拒否していることだ。全員協議を法的に有効だとし、そこで選ばれた東京書籍で一本化し、必要冊数を報告するよう3市町に求めている。国の検定に合格し、正規に採択された教科書を排除することになる県教委の姿勢は許されない

 石川県加賀市でも、審議の大詰め段階で育鵬社の教科書を支持する意見を述べていた教育委員2人に、市教委の幹部職員が休憩時に「責任を取れるのか」という趣旨の発言をしたことが明るみに出た。

「圧力ではない」と市教委側は否定するが、その後の審議は育鵬社支持の意見が鳴りを潜め、全会一致で別の社に決まった。教科書採択の権限と責任は複数の教育委員に与えられている。
 だが、実際には採択の際の議論が形骸化している地区も少なくないとされ、事務局案を教育委員が追認するだけの教委も散見される。教育委員はもっと主体的に採択任務に当たり、自らの見識と責任で教科書を選んでもらいたい。

 八重山地区のように広域採択の判断が割れることを想定して、法律はできていない。このため、国は市町村単位の採択を可能にする法改正に前向き姿勢をみせる。しかし、今回の事態収拾はあくまで現行の規則で進められるべきである。

 国は、県教委と竹富町の違法を放任せず、是正をはじめとする毅然(きぜん)とした措置を臆することなく取らなければならない。違法を容認する形での安易な法改正は、広域採択のメリットを損なう結果となり、将来に大きな禍根を残すだろう。[以上、引用終了]

産経新聞