歩きスマホ禁止条例

◆「歩きスマホ」禁止条例案を提案へ 神奈川・大和市

 神奈川県大和市は27日、道路など公共の場での「歩きスマホ」を禁じる条例案を6月市議会に提案すると発表した。7月1日の施行をめざす。
 市は「歩きスマホの防止に特化した条例は全国初」としている。「禁止」をうたっているが罰則規定はない。市は4月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、マスク着用への協力を求める条例も制定、施行している。

 条例案では、市内の道路や駅前広場、公園など屋外の公共の場所でスマートフォンや携帯電話を操作する時は、ほかの歩行者や車両の妨げにならない場所で、立ち止まった状態で行わなければならない、と定めている。

歩きスマホ禁止

 歩きスマホをめぐっては、SNSや地図アプリ、「ポケモンGO」などの利用が拡大するなか、歩行者とぶつかってケガをしたり、歩行者用信号が赤になっているのを見落として事故に遭ったりする危険性が指摘されてきた。
朝日新聞デジタル 2020年5月27日

歩きスマホ 実験
愛工大 小塚一宏名誉教授工学博士による「スマホの視線計測に関する研究」

 ◇視界の“95%”が消える? 「ながらスマホ」の危険性を視線計測で検証

 2013(平成25)年から2018(平成30)年の5年間で、ながらスマホなど携帯電話使用に起因する交通事故の件数は約1.4倍に増加しています。全事故件数が減少する中での増加となり、ながらスマホが社会問題といえる理由のひとつとなります。

 ながらスマホが引き起こす事故やトラブル。あなたのその行動が、一生の後悔を生むかもしれません

 車の運転中に携帯電話を使用する際の視線の動きを本格的に研究し始めたのは2004年。2008年に改正道路交通法が施行され、自転車走行時の携帯電話やイヤホンなどの操作が安全運転義務違反として明記されたことから、自転車についても車と同様に視線計測に関する研究を始めました。

携帯専和使用よる事故

 ◇ながらスマホによる事故は、いつ頃から増えたと感じますか?

 スマホが急速に普及した2011年ごろからです。同年、駅のホームでのながらスマホでの事故発生の可能性を社会に発信するため、西武新宿駅で実証実験を行うことになったんです。

 2013年にはJR四ツ谷駅で小学生がスマホを見ていて線路に落ちるという事故が発生しました。
 本人はホーム下のくぼみに逃げて助かったものの、中央線が何時間も止まって大問題になりましたね。

 その後、スマホを見ながら駅のホームを歩いていた人が線路に落ち、電車にひかれて亡くなるといった事故が頻発しました。実証実験以降、悪い未来を予見したように事故が相次ぐこととなります。

 そのときの実験の内容を具体的に教えてください。

 学生に視線計測装置をつけてもらい、一般客がいる西武新宿駅のホームを、スマホを操作しながら歩いてもらいました。
 学生には、ツイッターを見ながらホームを歩いてもらいましたが、新しい情報が次々入るため、それを追いかけようとして視線はスマホの画面に集中。画面を凝視している状態では、視界が20分の1になるという実験結果があります。つまり95%も視野を失っているんです。

ながらスマホ
無タスクの場合(横断に約18秒)

 実験中に、幼い子どもとお母さんの親子連れが学生の横を追い越して行く様子が視界に見えましたが、学生は子どもに気づきませんでした。視界に入ったから見えているというのは誤解です。視界に入った人、車などに視線が移動し、脳で認識されて初めて見えているといえます。 

 視線移動範囲が広い、特に横方向に広くなっている。周囲の安全確認が十分可能で、状況変化に対応できる状態

ながらスマホ
通話しながらの場合(横断に約21秒、17%増加)

 無タスクに比べ、視線の移動範囲がやや狭く 一見周囲の様子を見ているようでも、認識できていない、反応が鈍い、上の空の状態などが考えられ、安全確認として不十分。

ながらスマホ
SNSの読み取り・文字入力をしながらの場合(横断に約24秒、31%増加)

 画面に視線が集中(視線の張り付き)。前方へは、時折先行する人を見る程度の視線移動。左右方向に視線が向けられず、危険な状態。

◆人は、同時に2つ以上のタスクを同等にできない!?

――ながらスマホによる事故が発生しやすい場所はありますか?

 駅のホームや横断歩道、大きな交差点、階段の上り下り、エスカレーターの乗り口と降り口ですね。朝のラッシュ時は、皆さん急ぎ足で同じ方向に歩きますよね。ところが、スマホを使っている人は30%くらい歩く速度が落ちるんです。歩行中に蛇行することもあります。ときには、エスカレーターの降り口で突然立ち止まることも…。皆が一斉に歩いている中で、誰かがそういう行動をとると、事故につながりやすくなります。

――スマホで何をしているときが、最も事故につながりやすいのでしょうか?

 統計は出ていませんが、ゲームやSNSの閲覧、地図アプリの操作などが考えられます。埼玉県草加市では、2017年に、地図アプリを見ていたトラックのドライバーが赤信号を無視して突っ込み、子どもをかばってお母さんが亡くなったという事故が発生しました。

 2016年に愛知県一宮市で、ドライバーが運転中にゲームアプリを操作していて、横断歩道上の小学4年生を跳ねて死亡させるという悲惨な事故が起きました。愛知県西尾市でも昨年、同様の事故が起きています。

 ニュースやメディアでこれだけ注意喚起されていても「自分だけは大丈夫」と安易に考えて、ながらスマホをしてしまう人が多いということでしょう。
SB NEWS 2019-11-01