※ラッセンは年内いっぱい南沙諸島付近に留まる予定と発表されています。
 中国は報道面では虚勢を張っていますが、実際には手出しができないので、やや離れた所からじっと様子を伺うしかないわけで、年末にラッセンが一度横須賀に帰港するあたりで米中がそれぞれどういう動きを見せるかが気になるところです。


ddg-82 【北京時事】
 南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国がスービ(中国名・渚碧)礁などに造成した人工島から12カイリ(約22キロ)以内に米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」が入ったことを受け、中国外務省の陸慷報道局長は27日、談話を発表、「中国の関係部門が法に基づき、米艦を監視し、追尾し、警告した」と対抗措置を取ったと明らかにした。(右は横須賀基地:ラッセン※)

 その上で「米艦の行動は中国の主権、安全への脅威であり、地域の平和と安定を損なう」と批判し、「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。

usa ラッセンは現地時間の27日午前(日本時間同)に進入し、米CNNテレビによると、この日のうちに作戦を終了した。米軍は引き続き派遣を繰り返す構えとみられ、南シナ海を舞台にした米中関係緊迫化は必至だ。中国側は米国に強い抗議を申し入れた。

 陸局長は、米艦が「中国政府の承諾なしに違法に中国の島・岩礁の近海に進入した」と非難。一方、人工島造成についても「自国領土内で行っている建設活動は主権の範囲内だ」と主張した。

 スービ礁は中国による埋め立て工事前は満潮時に水没する暗礁だった。こうしたスービ礁などに建設した人工島は主権の及ぶ「領海」を構成しないとする米国の主張に真っ向から反論している。

 陸局長は建設活動について「特定の国家を標的にしておらず、航行・飛行の自由に影響を及ぼさない」と改めて正当性を強調。米国こそが「航行の自由」を名目にして、「中国の主権と安全を損なっている」と強く批判した。

 さらに「中国は領土主権と安全、合法で正当な海洋権益を断固守る。挑発をたくらむいかなる国家にも断固対応し、海空の状況への厳密な監視を継続し、あらゆる必要な措置を取る」と警告。今後も主権維持に向けた対抗措置を続ける考えを示し、米側をけん制した。

 また「中国の抗議に真剣に対応し、過ちを直ちに正して、中国の主権と安全に脅かすいかなる挑発行為もやめるべきだ」と米国に要求。南シナ海の領有権争いで中立的な立場を維持するよう訴えた。
 中国が実効支配する南シナ海の岩礁から12カイリ以内への米艦進入は2012年以来。中国は昨年以降、岩礁の埋め立てと施設建設を加速させている。ラッセンは神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地を拠点とする。


――関連記事――
【南シナ海】米艦の南沙諸島派遣で、オバマ政権高官が日本側に方針説明


※イージスシステム搭載ミサイル駆逐艦ラッセン(英語: USS Lassen, DDG-82)
 アメリカ海軍のミサイル駆逐艦、アーレイ・ バーク級ミサイル駆逐艦の32番艦。艦名はベトナム戦争で名誉勲章を受章したクライド ・エヴェレット・ラッセン中尉に因む。2009年5月横須賀に配備される。
 9200トン、士官兵員380名。
lassen
※クライド ・エヴェレット・ラッセン中尉(右)
 ベトナム戦争で名誉勲章、受賞。