※訪韓の表向きの目的は「朝鮮半島情勢や新型コロナウイルスをめぐる両国の協力体制の意見交換」ということになっていますが、メディア各紙が報じているように、香港問題や米中の対立激化のなかで親中・親北の文在寅政権を圧迫して取り込むのが狙いということでしょう。

 米中どちらにも頭の上がらない韓国の二股外交ももはや限界点に達しているようですが、アメリカ側は「(韓国が)米中のどちらにつくのか、もう選択済み」と余裕の構え。一方、中国は楊氏に続いて習近平氏自ら年内に訪韓を予定。風前の灯状態の文政権の抱き込みに必死になるほど追い詰められているようです。 *

徐薫 楊潔篪

 ◇中国、韓国取り込みの窮地

 韓国大統領府は、中国で外交を統括する楊潔篪(※チ)政治局委員が21日から南部プサン(釜山)を訪問して、ソ・フン(徐薫)国家安保室長と会談すると発表しました。
 韓国メディアは香港の問題などをめぐって中国がアメリカとの対立を深める中、楊政治局委員が韓国に対し中国への支持を求めてくるのではないかなどと伝えています。

 韓国大統領府の報道官は19日午前、記者会見を開き、中国で外交を統括する楊潔※チ政治局委員が21日、南部プサンを訪問し、翌日の22日にソ・フン国家安保室長と会談すると発表しました。

 会談で双方は朝鮮半島情勢や新型コロナウイルスをめぐる両国の協力について意見を交わすとしています。

 また、韓国大統領府の関係者によりますと、ことし韓国が議長国を務める日中韓3か国の首脳会議の開催や、韓国が目指す習近平国家主席の年内の韓国訪問などについても協議する見通しだということです。

 一方、韓国メディアは、香港の問題などをめぐって中国がアメリカとの対立を深める中、楊政治局委員が韓国に対し中国への支持を求めてくるのではないかなどと伝えています。

※「チ」は、竹かんむりに褫のつくり
NHK NEWS WEB 2020年8月19日


中国、韓国取り込みの窮地 

 ◇支持率低下の文在寅政権、内政対応に追われ外交は上の空

 中国外交担当トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)・共産党政治局員が、近く韓国を訪問する方向で調整を進めている。
 ドナルド・トランプ米政権は、自由主義諸国の「自由・民主」「人権」「法の支配」を守るため、中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」など中国5社の製品やサービスを使う企業とは原則、米政府との取引を中止した。習近平国家主席の中国としては、米国の同盟国でありながら、左派色の強い韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を攻略し、取り込むつもりのようだ。
 「(中韓両国は)重要な近隣国で協力のパートナーだ」「(楊氏訪韓の)関連情報があれば速やかに発表する」

 中国外務省の趙立堅副報道局長は13日の記者会見で、こう語った。

 韓国メディアの同日の報道によると、楊氏の訪韓が実現すれば2018年7月以来で、韓国政府が進めている習近平国家主席の年内訪韓や、朝鮮半島情勢などについて意見交換するという。

 ただ、中国の狙いは別にありそうだ。

ドナルド・トランプ
米政府「中国ハイテク5社の製品を使う企業の排除、取引禁止」を発表

 米政府は13日、中国ハイテク5社の製品を使う企業に関して、米政府との取引を禁じる規則を施行し、国際的なサプライチェーンから締め出す動きを加速させた。中国が、5G(第5世代移動通信システム)を世界に展開して覇権を握ろうとしているからだ。

 中国には弱点がある。

 5Gに不可欠な、最先端のCPU(中央演算装置)の製造ラインを持つ受託製造会社は、世界中で台湾の半導体受託製造大手「台湾積体電路製造(TSMC)」と、韓国のサムスン電子の2社しかない。
 TSMCは米国の対中制裁強化に呼応し、9月からファーウェイ向けの半導体出荷を止める。一方のサムスンは、文政権が態度を表明できずにいる。

 文政権は、経済低迷やスキャンダル続発で支持率が下落している。同盟国・米国の意向は無視できないが、最大の貿易相手国である中国との関係も重視したい。

 こうしたなか、楊氏は「韓国の取り込み」を狙って訪韓するとみられる。韓国は、米国に付くのか? 中国に付くのか?

 韓国事情に詳しいジャーナリスト、室谷克実氏は「支持離れが広がる文政権は現在、内政対応で頭がいっぱいで、外交は上の空だ。もともと、米国よりも中国に軸足を置く以上、楊氏の訪韓を受け、最後は中国の言うことを聞き、サムスン電子に圧力をかけるのではないか」と語る。

 トランプ大統領が激怒し、「米韓同盟」を解消する可能性も出てきた。
夕刊フジ 2020年8月17日

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