珍種のカビ
珍種のカビ、スポロディニエラ・ウンベラータ

 昆虫の死骸に生える珍しいカビ「スポロディニエラ・ウンベラータ」が新潟県十日町市で発見された。ケカビの一種で、国内では1996年、茨城県内で最初に発見されたが、新潟県内では初となる。

 同市松之山松口の里山科学館「森の学校」キョロロの近くに住む小学生が23日に見つけ、同館に連絡した。
 夏休みの自由研究でキョロロの森を散策中、くいに止まった状態で死んでいたエゾセミを何かがすっぽり覆っていて「何だろう」と不思議に思い、連絡したという。体長4センチのエゾセミの上にはおびただしい数の直径約2ミリの茶色の球形があった。

珍種のカビ 胞子嚢柄
胞子嚢柄

 同館は早速、菌類の専門家である筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所の出川洋介准教授に照会。出川准教授は「新潟県では初記録。これだけ見事に成長したものはなかなか見ることができない」とコメントした。

里山科学館
里山科学館「森の学校」キョロロ:十日町市松之山松口

 同館は2003年の開館以来、探鳥会や里山の生きもの探検を行うなど地域全体で貴重な動植物を探し、自然の大切さを見つめてきた。
 研究員の富塚茂和さん(34)は「小学生の『これは一体何だろう』という疑問が大発見につながった。自分自身で自然の中に入って見つけ出す大切さを改めて感じた。地域の人たち全体で自然を守ってきた」と話した。貴重なこのカビは標本として保管する。【板鼻幸雄】
毎日新聞 8/29(木)

十日町市

Sporodiniella umbellata(スポロディニエラ・ウンベラータ)
ケカビ目
[特徴]
 栄養菌糸は昆虫(セミ)の遺体上から付近の植物遺体、コケ上等に薄く拡がり、時に白色綿状の小塊となる。-- 胞子嚢柄は栄養菌糸から単生して伸び、下方に垂れ下がる場合が多い。
 殆んど無色ないし淡黄褐色の絹糸状、長さ 1-3 cm. 程度、時にはそれ以上に伸びる。
 表面は平滑、稀に少数の隔壁があり、径 50 μm. 程度。先端で十数本ないし20本程度に分岐して放射状に散開し、径 2 mm. 程度までの薬玉形になる。

 分枝の基部は括れ、基部付近で径 25-40 μm.、上半で更に数本に2次分岐して散開する。
 2次分枝は直線状ないしわずかに反り返って弓状になり、長さ 450-550 μm. 程度、次第に細くなり、先端は鈍い針状になる。
 分枝基部から 70-100 μm. 程度のところから長さ 60-70 μm.、径 17-20 μm. の短い分枝を外方にほぼ直角に伸ばし、先端に胞子嚢を形成する。-- 崩壊前の完全な胞子嚢は確認できなかった。

 中軸は亜球形ないし広楕円形、淡黄褐色、径 22-32 μm.、カラーは確認できない。-- 胞子は不正球形ないし広楕円形、無色、ほぼ平滑、薄壁、径 4.4-6.3 μm. -- 接合胞子は確認できなかった。-- 栄養菌糸中に厚膜の芽子の様なものが観察される。
 菌糸の一部に隔壁が形成されて球状に膨らみ、無色、平滑、径 9-20 μm. になる。内容は細かい泡状。

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