※「文在寅大統領は五輪開催前から北朝鮮の顔色ばかり伺い、金正恩に振り回されている」「北朝鮮に乗っ取られた史上最低の五輪」という声も上がり、いま一つ盛り上がりに欠ける平昌五輪も残すところあと2日、日本時間の25日(日)20:00に閉会式が行われます。

 閉会式はオリンピックの最後を飾り、次の大会へとバトンを渡す重要なパートですが、最後まで北朝鮮に政治利用される文大統領につける薬はなさそうです。

金英哲偵察総局長
「休戦協定白紙化」の声明を発表する金英哲偵察総局長=2013年3月(朝鮮中央通信)

 ◇開会式は金与正氏の「ほほ笑み外交」、閉会式には“テロの元締め”を派遣

【江陵=桜井紀雄】
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、平昌五輪の開会式に妹の金与正(キムヨジョン)氏を派遣したのに続き、閉会式には、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長を韓国に送り込むことを決めた。
 妹の「ほほ笑み外交」とは対照的に、対外工作を手掛け、強硬派で知られる側近の派遣という硬軟織り交ぜた波状攻勢で、文在寅(ムン・ジェイン)政権を抱き込む狙いが透けてみえる。

 金英哲氏は、対韓国政策を取り仕切る党統一戦線部長も兼ねているとされ、南北関係の実務を話し合うには、打って付けの人物といえる。
 だが、日米韓当局の間では、工作機関トップの偵察総局長を長年務めた“テロの元締め”としての顔の方がよく知られてきた。

 40人以上が犠牲となった2010年3月の韓国哨戒艦「天安(チョナン)」撃沈事件に加え、15年に南北軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)の韓国側で地雷が爆発し、韓国兵2人が負傷した事件にも関わったとみられている。金正恩氏の暗殺を描いた映画を製作したソニー子会社の米映画会社に対する14年のサイバー攻撃も主導したとされる。

 ペンス米副大統領は9日の開会式の出席前、北朝鮮に拘束され帰国後に死亡した米大学生の父親らとともに「天安」の展示館を視察。人命を奪うテロさえ、ためらわない金正恩体制に行動で拒絶感を示した。

 こうした断固とした姿勢から北朝鮮側はペンス氏との会談を拒否したとも指摘される。米韓の独自制裁も本来、北朝鮮のテロや人権蹂躙が背景にあった。

 韓国紙、東亜日報は22日、韓国が軍事境界線付近で行ってきた対北拡声器放送で、昨年下半期から金正恩氏を名指しした非難を自制してきたと伝えた。文在寅大統領が北朝鮮に敵対行為の中止を呼び掛けた昨夏のベルリンでの演説を受けた措置だとみられている。

 昨夏以降も北朝鮮は核やミサイル実験を繰り返してきたが、文氏は、金正恩氏が今年1月に五輪参加の用意を表明後は特に対北融和姿勢を隠そうともせず、今度は米韓の独自制裁対象者をも迎え入れようとしている。

 金英哲氏の訪韓について、韓国の保守系最大野党、自由韓国党は22日、「天安撃沈事件の主犯にあえて韓国の土地を踏ませてはならない」と厳しく批判した。
 保守層は、文政権の対北融和への傾斜に警戒感を高めており、北朝鮮代表団の訪韓は、韓国世論の分断という副作用も引き起こしている。
産経ニュース 2018年2月23日