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 世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)フェイスブック(FB)が、「いいね!」ボタンを設置した外部のウェブサイトを通じて、利用者の「個人情報」を大量に集めている。

 「いいね!」の設置サイトを閲覧するとクリックしなくても自動的に端末情報などがFBに送られ、FBの保有する利用者登録情報と紐(ひも)づけされるためだ。

 「いいね!」は国内の公的機関や企業をはじめ、医療情報サイトなどにも設置されているが、こうした機能があることを認識しているサイトは少ない。専門家は個人情報保護法に抵触する可能性を指摘している。

 FBの情報収集を巡っては今月、ベルギーの裁判所がプライバシー侵害を認定。
 FBは「海外では対応を検討しているが、日本では予定はない」としている。

 読売新聞がFBの「いいね!」「シェア」「ログイン」などの設置状況を調べたところ、1月末現在で全国上場企業の売上高トップ100社のうち半数以上で確認。
 外務、財務、農水省、警察庁などの公的機関や、アダルトサイト、医療情報サイト、患者らが病状をつづる「病気ブログ」でも多数設置されている。

 これらのプログラムはFBによって無償提供され、誰でも自由に設置できる。
 サイト運営者にとっては、コンテンツ拡散などに役立つが、設置すると、サイトを閲覧した端末に端末識別情報や閲覧サイト情報などをFBのサーバーに送信させる仕組みになっている。

 端末の識別情報は単独では個人情報保護法の規制対象外のため、こうした閲覧履歴の収集はFB以外の事業者も普通に行っているが、実名登録が原則のFBの場合、利用者の氏名等の登録情報と結びつけ、個人情報として蓄積することになる。
 FBは、こうした一人一人の関心や嗜好(しこう)がわかる閲覧履歴をもとに、FB内外での広告に活用している。

 FBは「現在は、自社の規約で説明している」としているが、利用者には、どのサイトに「いいね!」が置かれているか閲覧するまで分からず、閲覧するとその瞬間に情報が送信されるため、拒否できない状態だ。
 一方、設置サイト側は「商品の宣伝になると思って設置しただけで、まさか閲覧するだけで情報送信させる仕組みとは思わなかった」(自動車メーカー)などと説明し、自社サイトの規約で説明しているケースはほとんどなかった。

 プライバシー問題に詳しい情報セキュリティ大学院大学の湯浅墾道(はるみち)教授の話「利用者にとっては予測も拒否もできない情報収集。規約も分かりにくく、送信に気づかない人も多いことを考えると個人情報保護法の求める適正取得の義務に違反する可能性がある」
読売新聞 2/25(日)