地対空誘導弾パトリオット(PAC3) ◇出雲(島根)、海田市(広島)、松山(愛媛)、高知(高知)の4駐屯地に展開
 
 政府は12日、北朝鮮が米領グアム沖に弾道ミサイルを発射する計画を表明したことを受け、中四国4県の陸上自衛隊駐屯地に空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開した。
 ミサイルや部品の国内への落下などの不測の事態に備えて迎撃態勢を整えた。

 安倍晋三首相は12日、山口県長門市で「国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と記者団に述べた。

 PAC3を展開したのは、出雲(島根)、海田市(広島)、松山(愛媛)、高知(高知)の4駐屯地。北朝鮮はミサイルの「島根、広島、高知3県の上空通過」を予告しており、政府はPAC3の常時配備がない空白地帯の4県に空自岐阜基地(岐阜)などから部隊を移動させた。

 PAC3による弾道ミサイル迎撃には、自衛隊法に基づく破壊措置命令が必要となる。政府は昨年8月以降、命令を常時発令している。

 日本のミサイル防衛は、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、撃ち漏らした場合にPAC3が高度数十キロの上空で着弾直前に迎撃する二段構えをとっている。
 政府はPAC3の4カ所への配備に加え、海自のイージス艦を日本海などに展開し、24時間態勢で警戒・監視に当たる。

 北朝鮮はミサイル発射計画を8月中旬までに完成させるとしている。
 首相は11日から地元の山口県に入り、12日は父、安倍晋太郎元外相の墓参りなどを行った。首相の不在中は菅義偉官房長官が都内に残り、緊急事態に即応することとしている。

 首相は14日夕に帰京し、15日は日本武道館で開かれる政府主催の「全国戦没者追悼式」に出席する。その後は例年通り山梨県鳴沢村の別荘で静養する方向だが、休暇期間などは北朝鮮情勢を踏まえた判断となりそうだ。
産経ニュース 2017.8.12


※《参考》
・SM-3ブロック1A――最大射程1200km、迎撃高度約500km、秒速4km
・SM-3ブロック2A――射程2000~2300km、迎撃高度約1000km

●射程: SM-3ブロック2A > THAAD > PAC3 

迎撃ミサイル・射程比較

※海上配備型迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」:迎撃高度約1000km。
 日本付近に配備したイージス艦からグアムを防衛する事が可能。


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