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 ◇「積分落戸」という戸籍制度を始めようとしている
 ◇望ましくない者は市民から除外
 ◇トランプ政権も仰天の「合法的人種差別政策」

    1月28日からの春節の大型連休で、南京出身の知人が、東京旅行のため来日して、再会した。
    私は当然ながら、いま南京でホットな話題といえば、アパホテル経営者の南京大虐殺否定本を巡る騒動かと思っていた。
    ところが、そうではないらしい。彼は口を尖らせて、次のように吠えた。

    「まったく本当に、トランプの『国境の壁』か、習近平の『積分落戸』かっていうくらい、わが国でも常軌を逸した制度を始めるものさ。
    しかも、わが故郷の南京市が、全国の出発点だという。
    南京は昨年9月末に突然、市政府(市役所)の命令で、マンション購入時の頭金を、一夜にして従来の2割から8割に上げたのだ。

    この『限購令』(マンション購入制限令)によって、820万市民が大混乱に陥った。
    この時も南京市が第一号で、その後全国に『限購令』が広まっていった。

    その時は、『棄購』(チーゴウ=購入放棄)という流行語が生まれたものだ。
    頭金が2割ということでマンションを買ったものの、突然制度が変更になって、8割だというのだから、購入放棄者が続出したのだ。
    なぜこんな制度改革を行ったかと言えば、マンションの価格を下げるためだという。われわれ南京市民は、ため息しか出なかった。

    だが、今度はもっとひどい制度が始まる。きっと中国で、『棄戸』(チーフ=戸籍放棄)という流行語が生まれるよ」

    この南京人が憤っている「積分落戸(ジーフンルオフー)」というのは、中国が始める、おそらく世界に類例を見ないであろう戸籍制度のことである。
    南京に移り住んで市の戸籍を取得したい人が対象だ。

    南京市の戸籍の取得希望者の点数を積み重ねていき、その点数の多寡によって、戸籍を与えるかどうかを決めるという。
    具体的には、15項目の「南京市積分落戸指標」を定めて、合計で100点以上を得た人のみが、南京市の戸籍を申請する権利を得られる。
    早い話が、「市境の壁」を築いて、望ましくない者は市民から除外するという「合法的人種差別政策」だ。

――15項目の大略は以下の通り――

    ①保健状況: 南京市の社会保健に1年加入しているごとに、+10点。

    ②定住状況: 持ち家の1㎡あたり、+1点。ただし、+100点を超えない。

    ③居住期間: 南京市での居住1年あたり、+2点。ただし、+20点を超えない。

    ④年齢状況: 45歳で、+2点、以下1歳下がるごとに、+1点。ただし20点を超えない。46歳以上は0点。

    ⑤学歴状況: 博士号取得者は、+140点、修士号取得者は、+100点、大卒は、+80点、短大・専門学校卒は、+60点、高卒などは、+40点。それ以下は0点。

    ⑥技術技能レベル: 資格によって、+40点から+120点。

    ⑦戸籍取得地域: 指定された郊外に戸籍を申請するならば、+30点~+40点。

    ⑧納税状況: サラリーマンは、過去3年の南京市への個人所得税の納付額1000元(約1万7000円)あたり、+5点。利子などの個人所得税は、納付額5000元(約8万5000円)あたり、+5点。個人事業主は、過去3年の納税額1000元あたり、+5点。個人投資家と法定代表人は、50万元(約850万円)以上の累計納税額で、+50点。以下、5万元ごとに、+10点。

    ⑨表彰奨励: 国家級表彰及び奨励者は、一つにつき、+80点。ただし、+160点を超えない。省級は一つにつき、+50点で、+100点を超えない。市級は、+30点で、+60点を超えない。

    ⑩社会服務: 南京市の無償献血経験者は、1回につき、+2点。ただし、+40点を超えない。1つ星から5つ星までのボランティア経験者は、星1つあたり、+4点。政府認定の慈善事業で寄付を行った者は1000元(約1万7000円)あたり、+2点。ただし、+10点を超えない。

    ⑪雇用帯同: 5人以上の安定した雇用をもたらした者に、+40点。以後、10人増えるごとに、+10点。

    ⑫科学技術成果: 発明特許取得1個あたり、+30点。実用新型特許取得1個あたり、+10点。外観設計特許取得1個あたり、10点。

    ⑬違法行為: 過去5年以内に、行政拘留された者は、1回あたり、-20点。麻薬更生処分を受けた者は、1回あたり、-20点。収容教育を受けた者は、1回あたり、-20点。

    ⑭信用不良: 金融機関などのブラックリストに載ると1回あたり、-20点。重度の者は1回あたり、-40点。ブラックリストの有効期間中は申請資格なし。

    ⑮刑事犯罪: 徒刑歴があれば、徒刑月数×-10点。

 livedoorニュース


※中国の民族政策と民族識別工作
 中国政府は、民族区域自治という少数民族政策を取っている。
 国民を、漢民族と55の「少数民族」とに区分し、その民族ごとに集住地域を「区域自治」の領域として指定。
 そこでは、「民族の文字・言語を使用する権利」、「一定の財産の管理権」「一定規模の警察・民兵部隊の組織権」「区域内で通用する単行法令の制定権」などを行う事を認めている。

 国民を構成する諸集団が、どの「民族」に帰属するかを法的に確定させる行政手続きを、民族識別工作といい、清代から民国期にかけて伝統的に「五族」とされてきた民族数は、この手続きにより56にまで増加。
 現時点でもまだ、識別されていない民族、あるいは便宜的に他の民族籍に分類されている民族も多数存在する。wikipediaより