小野寺五典

 ◇小野寺五典防衛相「対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない」

 【ソウル=名村隆寛】米朝首脳会談を前に、北朝鮮が日本の「疎外、孤立」を強調すると同時に、拉致問題は解決済み」と主張し日本の朝鮮半島統治に対する賠償まで要求している。

 北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は3日の論評で「米国の手下にすぎない日本反動らが『最大の圧迫共助』をわめき立てている」とし、「そんな醜態がもたらすのは現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難。4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、「過去にわが国を占領し、わが民族に与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と主張した。

 北朝鮮メディアは4月に、日本の一部メディアの報道を引用し「日本が現在、『日本疎外』現象に大いに憂慮している」と報じ、以降、「ジャパン・パッシング(日本素通り)」や「蚊帳の外」などの言葉で対日批判を続けてきた。

 日本の孤立を意味する一連の表現は、一部日本メディアや韓国メディアが安倍晋三政権を批判する中で多用してきたものだ。
 ただ、安倍首相は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」と断言。北朝鮮はこれが気に入らないようだ。むしろ孤立をあおり、日本からの接近に期待している様子がうかがえる。
 日本に「賠償」を要求する北朝鮮は、米朝会談の結果次第で日朝の国交が正常化し、日本からの経済支援が実現することを期待しているようだ。

 韓国も北朝鮮への見方を変えるよう日本に促している。シンガポールでのアジア安全保障会議(2日)で小野寺五典防衛相は「対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない」と述べたが、韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相は「疑い続けては対話に支障が出る。北朝鮮を理解してほしい」と反論した。
産経ニュース 2018.6.4

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