※筆者は2015年頃までこの映画の存在を知りませんでしたし、その後も、観る機会もないまますっかり忘れていましたが、今回、中国人の入国問題に端を発する騒動がきっかけで実際に映像を拝見し、関連する文献等を調べてみて、この映画に関するごく一部の方たちの評価がいかに悪意に満ちた不当なものであったかが分かりました。

 時代考証、史実に基づいた演出、セット、美術、実績のある実力派を揃えたキャスティングなど、制作に携わった人たちの熱意が十分すぎるほどに伝わってくる良作です。これを機にさらに多くの人の目に触れて、再評価されることを期待します。 *

映画『南京の真実』より  花山氏が「あと何分くらいありますか?」と尋ねるシーン
紙コップとぶどう酒
画像右手の人物は、階級章などから、ウォルシュ牧師(少佐)、通訳らと思われる

■花山信勝氏の回想録より
「以上の行事は、仏間ではせまくて、すべて廊下に立ったまま行われた」
「やがてウォルシュ牧師(軍帯同司祭・少佐)及び二、三人の将校にあいさつをして、それぞれしっかりと握手を交わされた」

「出口の鉄の扉が開いた。当番将校先導で、その後にチャプレン(牧師)と私がつづき、そのうしろに 土肥原、松井、東條、武藤の順で並び、両脇には看視、あとに将校が二、三名(第8軍の中佐)つづいて、 静かに中庭を歩んでゆく」

花山氏「静かに中庭を進んでいく。その間、約二分くらいかかったが、念仏の声が絶えなかった。とくに東條さんの声が……」

『南京の真実』より
死刑執行立会人
死刑執行立会人入場(23:50過ぎ)

航空写真 巣鴨プリズン
巣鴨プリズンの当時の航空写真と処刑棟(刑場の扉は13と13Aの二つあった)

【争点①】
某氏が主張する「袖からぶどう酒と(切子)グラスを出して13階段下でしみじみ別れの杯を交わす」というシーンに無理があること、さらに「故・田中正明先生に何度も聞いた有名な話」についても、処刑当日、田中氏が長野県にいたことなどを考えても整合性がありません。

・「巣鴨プリズンでは、尖ったものはすべて禁止、手紙にも万年筆は許されず、先の丸まった短い鉛筆があてがわれた」

・「食器類ははじめ瀬戸物の丼も用いられたが、それを割って自殺する恐れがあるとして、まもなくアルミ製になり、箸もスプーンにかえられた」

・「東條も、食事のときは金属製の丼と椀を、大事そうに新聞紙半ページほどの窪みのあるプレートに載せて、毎度黙々と配食の列につらなる」

板垣征四郎大将(山本昌平)
アルミ食器
「最後の晩餐」・・・ふだんは一汁一菜:(アルミ食器)

【争点②】
「当時の日本人はコップ=ガラスコップのことでは?」というコメントについて

 花山氏は青年時代に欧州各国で学んでおり、語学堪能、東京裁判や巣鴨プリズンで公用語と決められていた英語も流暢に話していました。

 とくに牧師とは親交が深く、やっかみ半分で「坊主のくせにアメリカ人と親しげに話している。アメリカ人に取り入っている」などとやつあたりをされるほどだったそうですから、記者会見の場でglassとpaper cupを間違えるということは考えにくいですし、場合によっては紙コップを単にコップということも日本語としては不自然でもありません。

*花山氏は浄土真宗の僧侶でもありますが、元々は宗教学者としての経歴が長く、キリスト教や神道にも精通しており、処刑後の記者会見が行われたのも東大の文学部印度哲学課研究室(本来の職場)です。
NYTimes紙やJapan Times紙などで「Dr.Hanayama」「Buddhist priest」が混在してのもそのためと思われます。

・「狭い研究室にはニュースカメラも運びこまれて、内外の報道関係者であふれ返り、記者たちは逸っているようであった。熱気が広がっている。この会見記事は、あすの朝刊のもっとも重要な記事になるにちがいないからである」

→当時から自社の飛行機でロンドンに紙面を輸送し、全米で3位の発行部数、充実した国際版紙面も持っていたNYTimesの規模から考えると、共同配信記事ではなく独自取材であったと思われます。

wikipedia「New YorkTimes」(The Times)
「20世紀に入ると世界各地に取材網を張り巡らせ、ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルと並ぶアメリカを代表する高級紙としての地位を確立」

水間政憲
田中正明 世界連邦運動」より

「南京の真実」
検証① 検証② 検証④ 検証⑤ 検証⑥ 検証⑦ 

       *       *

※花山氏の回想録と連合国側の元高官らの証言、米国国立公文書館の記録は一致しており、それ自体が重要な歴史的証言ともいえます。
映画『南京の真実』は上記に基づいて制作されており、上架式の処刑台はじめ、ぶどう酒と紙コップ、別れの水杯、刑場でのシーンなど正確に再現されています。

〔参考文献&史料・資料〕
『巣鴨プリズン未公開フィルム』織田文二
『QHQ報告書』(米国国立公文書館)
『巣鴨の生と死』花山信勝
『巣鴨プリズン 教誨師花山信勝と死刑戦犯の記録』小林弘忠
映画『南京の真実 七人の死刑囚』チャンネル桜エンタテインメント(監督:水島総)
『正論』 「南京の真実」制作日誌(水島総)
『東條英機と天皇の時代(下)』保阪正康
東京特派員クラブ(日本外国特派員協会の前身)

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