※中国、香港関係では川添恵子氏や福島香織氏、矢板明夫氏などの情報が速く、ソースも明確で信頼性が高いといわれていますね。 *

ドナルド・トランプ 習近平

◆“米中メディア戦争”熾烈化!米、中国スパイ記者を追放 
  共産党の工作は日本にも…メディアはいつまで“死んだふり”するのか

 習近平国家主席率いる中国・香港政府による「民主派弾圧」が進んでいる。香港警察は、「民主の女神」こと周庭(アグネス・チョウ)氏(23)や、香港紙「リンゴ日報」の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)らを国家安全維持法違反容疑で逮捕し、保釈した。

 新型コロナウイルスの大流行を引き起こしながら、覇権拡大を強める中国共産党の最高指導部と長老らは現在、河北省の避暑地で非公式・非公開の「北戴河会議」を開いているとされる。

 ドナルド・トランプ大統領の米国との「米中メディア戦争」「記者追放合戦」の行方や、注目される日本の決断とは。ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急寄稿第21弾で迫った。



 世界注視の北戴河会議-。習主席が「中国の夢」「偉大なる中華民族の復興」を掲げて船出した数年前とは異なる、「中国共産党政府の存続」そのものを賭けた、過去にないほど熱く、そして寒々とした会議が繰り広げられているはずだ。

 米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は6日、「議案には、中国共産党指導部による米国との『持久戦』への対応が含まれている」と報じた。

 中国の崔天凱駐米大使は先月21日、中国中央テレビ(CCTV)との独占インタビューで、「米中は今、対話さえ持てない異常な状況」だと語った。
 王毅外相も今月5日、国営新華社通信の単独インタビューで、米国の攻撃を非難しつつも、「各分野での対話を再始動させたい」との苦しまぎれのサインを送った。

 だが、世界全体で73万人以上、米国内で16万人以上もの死者を出した新型コロナの発生国であり、「自由・民主」「人権」「法の支配」を軽視する中国に対し、トランプ政権が“放つ矢”には加速度がついている。

 米政府は7日、「香港の自治侵害」などを理由に、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官を含む11人への制裁を発表した。習一派の党幹部もそのなかに含まれている。

 「米中メディア戦争」も熾烈(しれつ)化している。

 米国土安全保障局は5月8日、在米の中国特派員のビザ滞在を90日間に制限することを発表した。8月6日は初の有効期限だったが、環球時報が「約40人が、ビザの延長申請の結果を知らされていない」「いつでも即刻、出国をしなくてはならない可能性がある」と報じた。

 米国務省は6月、中国官製メディアはニュースメディアではなく、諜報活動と世論戦、情報戦を仕掛ける「中国共産党の道具」と危険視し、CCTVや、中国環球TVネット(CGTN)、環球時報、人民日報などの中国官製メディアを「外国使節団」に指定した。

 「中国からの特派員の多くは、国家安全部や人民解放軍の情報工作部門にも所属するなど『二重の身分』を持っている」との話も漏れ伝わる。

 この処置について、デービッド・スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は「自己防衛の措置」と述べている。

周庭 黎智英
逮捕後、約一日で保釈された周庭氏と黎智英氏

 11月3日の米大統領選まで3カ月を切ったなか、中国共産党が官製メディアを通じて「トランプ再選阻止」に動くことを阻止するための処置ということか。

 これは「米国の報復」とも言える。

 習政権は、武漢発の新型コロナウイルスによるパンデミックで世界が恐怖に陥っていた3月、米ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズ、WSJ3社の中国駐在の米国人記者13人を追放した。

 また最近、香港に駐在する米国人や、「一国一制度」を批判した外国人記者が「ビザ申請の返答がない状況」に直面していること、長く駐在していたオーストラリアの記者のビザ申請が却下されたことも報じられた。

 ■日本の政財官やメディアにも工作

 米メディアによる「自衛の動き」もある。

 ニューヨーク・タイムズなどが、中国官製英字紙「チャイナデイリー」に掲載された有料記事(宣伝)を、ウェブサイトからすべて削除するなど協力関係を中止したのだ。

 米中メディア戦争は現在、「プロパガンダ(=政府と党の宣伝工作)」と「ジャーナリズム」のデカップリング(=切り離し)が進んでいるといえる。

 「読者のいる所にプロパガンダあり」と2016年にメディア向けに演説した習氏だが、共産党にとって最も邪魔なのは、「真実を追及して伝える」ジャーナリズムなのだ。

 中国共産党による工作は、日本の政財官界やメディア界にも及んでいるといわれる。米中対立が深刻化するなか、日本の政治家やマスメディアはいつまで“死んだふり”をするつもりなのか?

 環球時報の胡錫進編集長は7月26日、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」に、「米国の地政学的な狂信者を目覚めさせるためには、中国にはより多くの核兵器が必要だ」と書き込んでいる。

 日ごろから、「平和」「安心・安全」を連呼する日本の政治家やジャーナリスト、テレビの“電波芸者”は、なぜ、「危険すぎる隣人」に対して一言の非難の声も挙げないのか?

 そろそろ、日本にも“追放リスト”が必要かもしれない。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)、『習近平が隠蔽したコロナの正体』(同)など多数。
ZAKZAK 2020年8月12日

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