サイバー攻撃で2時間“麻痺状態”

 ◇湾岸戦争やイラク戦争でも「麻痺作戦」を実行

 世界最大の原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島に派遣し、臨戦態勢を敷く米トランプ大統領。早ければ4月26日の“新月の夜”、闇に乗じて、北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるともいわれている。
 なんと、米軍は「2時間」で北朝鮮を消滅させる作戦を練っているという。いったいどんな作戦なのか、本当に成功するのか――。

 ◇北朝鮮全土に“麻酔”をかけ、反撃不能状態に

 米軍が総力を挙げて攻撃すれば、北朝鮮は壊滅的な打撃を受けるだろう。
 問題は、間違いなく北朝鮮が「在日米軍」と「在韓米軍」をターゲットに反撃してくることだ。そこで米軍は、北朝鮮から反撃する機能を奪う作戦を考えているという。
 北朝鮮全土を麻酔をかけたように“麻痺”させてしまうという。

 元韓国国防省分析官で拓殖大学国際開発研究所の高永喆(コ・ヨンチョル)研究員が米軍のシナリオについてこう言う。
「武力攻撃の直前に、まず米軍は有人または無人の“電子撹乱機”を飛ばして、妨害電波を送るはずです。北朝鮮の有線、無線の他、パソコンなど、ほぼすべてのネットワークを麻痺させるのです。1~2時間で終わるでしょう。外科手術の前に麻酔を打つようなものです。指揮命令系統が遮断され、命令が届かなくなるうえ、ミサイルシステムも制御不能になる。北朝鮮が反撃したくてもできない状態にしてから、攻撃を開始するわけです」

 1991年の湾岸戦争や03年のイラク戦争でも米軍は「麻痺作戦」を実行し、一定の成果を挙げているという。


 ■妨害電波を逃れる策を取る可能性も

 今月5日、北朝鮮がミサイル発射に“失敗”したのも、米軍がサイバー攻撃した可能性がある。
 3月に数秒で大破した中距離弾道ミサイル「ムスダン」についても、米ニューヨーク・タイムズ紙や英テレグラフ紙は「原因は米国が実施したサイバー攻撃にあるようだ」と報じている。

「当然、北朝鮮も対策をとっていますが、IT技術に関しては、米国の方が上です。米国は攻撃をする以上、“麻酔”で、同盟国に犠牲が出ないよう、事前に反撃封じをするはずです」(高永喆氏)

 しかし、これまで米軍の作戦は失敗も多い。本当にシナリオ通りにいくのか。厳しい見方をするのは軍事ジャーナリストの世良光弘氏だ。

「電磁波を巡る攻防、いわゆる電子戦は今に始まったことではありません。ここ5年で、インターネットを通じて、平時からサイバー攻撃をするようになった。武力攻撃前に電波妨害をすることも、91年の湾岸戦争以降、普通に行われるようになっています。確かに、米国の電子戦の技術は世界トップです。対北でも一定の効果があるでしょう。しかし、全土をカバーできないし、妨害電波を逃れる策も取っているはずです。反撃を完全に抑えることは難しいと思います」

 そもそも米軍が「麻痺作戦」をする前に、北朝鮮から先制攻撃されたら通用しない作戦でもある。やはり、米軍に攻撃をさせてはいけない。
日刊ゲンダイ 2017年4月15日