※人気もキャリアもある同世代の被害者を一方的に妬み、“荒らし”行為を非難されたことを逆恨みしての犯行ということですが、ネットは気軽にアクセス出来る一方で、感情(特に悪感情)が増幅されやすい危険なツールにもなり得るのだということを忘れてはならないと改めて思いました。
 被害者のかたのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

hagex
ITセミナー講師で人気ブロガーだったhagexさん(41)

 ◇司法解剖の結果、岡本さんの胸の傷は心臓にまで達していた

 福岡市のITセミナーで講師をしていた岡本顕一郎さん(41)が刺殺された事件で、殺人容疑などで逮捕された松本英光容疑者(42)が、他人を挑発する言葉をネット上に書き込む「荒らし」を繰り返し、岡本さんから注意を受けていたとみられることが26日、捜査関係者らへの取材で分かった。福岡県警は、松本容疑者が一方的に恨みを増幅させた可能性があるとみて、動機などを調べている。

 捜査関係者らによると、2人に直接面識はなく、インターネット上でしかつながっていなかった。松本容疑者は「ネット上(のやりとり)で恨んでいた」とトラブルを示唆する供述をしている。

松本英光容疑者(42)

 松本容疑者とみられる人物は、挑発する際に「低能」という文言を多用したことから、ネット上で「低能先生」と呼ばれていた。
 岡本さんは「Hagex」名義でブログを運営し、「複数のユーザーに誹謗中傷を繰り返している」などと容疑者を批判。容疑者とみられる人物のアカウント停止の動きもあったが、荒らしはやまなかった。

 松本容疑者は一連の批判に不満を募らせていたとみられる。
 事件後、ネット上に書き込んだ可能性がある文章には、「俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ」と責任を転嫁するような内容が記載されていた。

 神戸大の森井昌克教授(情報通信工学)は「ネット上の論争が一線を越えると恨みが増幅する人もいる」と指摘し「ネット上の出来事が現実社会とつながっていることを認識しなければいけない社会になっている」と警鐘を鳴らす。

 ◇岡本顕一郎さんのブログは月間300万PVの人気ブログ

 殺害された岡本顕一郎さん(41)はサイバーセキュリティーの専門誌編集者を経て、サイバー犯罪を調査・研究する会社に所属し、多くのメディアに取り上げられていた。

 特に詳しかったのが、匿名化ソフトを使わないと接続できず、犯罪の温床となっている「ダークウェブ」と呼ばれるインターネット空間で、共著で本も出版していた。

 実名を出さずに「Hagex」というハンドルネームを使い、インターネット上で話題の書き込みを取り上げるブログを運営、人気が出ていた。自身の経験を基に、ネット上のトラブルに関連するセミナーも以前から開いていた。

 知人によると、岡本さんは正義感が強く、「迷惑を掛けるネットユーザーに強い言葉で対応し、事件に巻き込まれたのかもしれない」と声を落とした。

 岡本さんが所属する会社「スプラウト」(東京)の高野聖玄社長はホームページ上に「創業時からのメンバーで、多方面で大変活躍していました。サイバーセキュリティー業界にとっても、貴重な人材を失ったと言わざるを得ません」とのコメントを出した。
産経ニュース 6月26日 

hagex
福岡市中央区大名2丁目6‐11、 Fukuoka Growth Next (旧大名小学校)

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◆ 犯罪予告と刑罰
  通常は脅迫罪に問われるが、爆破予告や無差別殺害予告の場合、脅迫の対象が広範囲に及ぶため、警察や対象とされた機関への業務妨害などに問われることもある。

 以下は予告を実行しない場合も犯罪に問われる
・特定の個人を脅迫した場合 - 脅迫罪
・嘘の情報などを用いて業務を妨害した場合 - 偽計業務妨害罪
・暴力的な表現を用いて業務を妨害した場合 - 威力業務妨害罪
・特定の団体がテロを予告した場合 - 破壊活動防止法違反
・上記4項目に当てはまらなくても、悪戯目的でやった場合 - 軽犯罪法違反(業務妨害)