リチャード・ダンジグ元米海軍長官
リチャード・ダンジグ元米海軍長官

 北朝鮮は核・弾道ミサイルだけでなくサイバー攻撃の能力も強化しているとされる。
 米軍は中露などからの攻撃も警戒して対策を拡充するなど、サイバー攻撃は深刻な脅威となっている。2008年の米大統領選でオバマ前大統領の安全保障問題に関する顧問を務めたリチャード・ダンジグ元海軍長官に話を聞いた。

◇サイバー攻撃による最悪のシナリオとは

「何者かが核兵器のコントロールシステムに不正侵入することだ。人々はシステムをデジタル技術だけでつくらないことや分離することは意識しているが、懸念はある。他国が、彼らの核指令統制システムに米国などが不正侵入するのではないかと神経質になり、行動を起こすという懸念もある。他国の核指令統制システムへの攻撃に利益はない」

◇サイバーは兵器と認識すべきか

「その通りだ。抑止や、何者かがシステムへの攻撃に成功しても、壊滅的なダメージとならないように強いシステムをどうつくるか考えなくてはいけない」

◇サイバーに関する国際法や規範をつくるべきか

「つくるべきだ。いくつかの進展がある。NATO(北大西洋条約機構)は(サイバー戦に適用される国際法に関する)タリン・マニュアルを進めている。オバマ前大統領は、中国の習近平国家主席と平和が保たれている間は互いに相手国の民間インフラへの攻撃にサイバー兵器を使わないことを合意した。これは2国間の規範で有益なものだ。保証はないが、有益だ」

◇セキュリティーには多額の費用が必要だ。国民にどう説明すべきか

「車を考えてみよう。車は多くの死亡事故を引き起こす。そして、私たちは安全のためにさまざまな投資をし、毎日、注意している。法で規制されているブレーキや車の検査、シートベルトを締めることなどが必要だ。サイバー技術もこのようなものだ」

◇日米の協力は

「日米はすでにサイバー協力に関する重要な対話の枠組みを持っている。米国は日本に専門知識を提供し、日本も米国を助ける技術を持っていて米国にアドバイスをしている。東京五輪が日米のサイバーにおける協力を促進するだろう」(坂本一之)
        

※リチャード・ダンジグ
 イエール大学法科大学院で法学博士。クリントン米政権の1998年に海軍長官。
 2007年から08年の大統領選でオバマ前大統領の安全保障問題に関する上級顧問を務めた。新米国安全保障センター(CNAS)理事。73歳。ニューヨーク市生まれ。
産経ニュース 2018.1.14

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