こういう時期もありましたが、安倍氏暗殺で今は昔の物語・・・
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「腐っても自民党」+「寝返り狸」⇒「腐りきった政権」+ 「嘘の女帝」

魑魅魍魎

 菅義偉・首相にもはや積極的に解散に打って出る力はなく、衆院議員の任期満了(今年10月)目前の9月の“追い込まれ解散”になると与野党の見方は一致している。自民党内では菅氏のもとでの選挙は苦戦必至と見られており、次期政権の有力候補もコロナ対応で失敗を繰り返している。そこで党内ではまさかの安倍晋三・前首相の再々登板説まで浮上している。安倍氏本人も満更ではない様子だ。

 そんな安倍氏に“冷水”を浴びせたのが二階俊博・幹事長だ。

「私は関与していない」。5月17日の記者会見で二階氏は、2019年参院選の際、自民党本部が河井案里氏(公選法違反で有罪判決)陣営に提供した1億5000万円への関与を否定した。

 この発言でいったん収まったかに見えた河井夫妻選挙買収事件が再びクローズアップされた。

 会見に同席した二階側近の林幹雄・幹事長代理は「当時の選対委員長が広島を担当しており、(二階氏は)細かいことは分からない」と補足し、当時の選対委員長で安倍氏に近い甘利明・元経済再生相に矛先を向けた。ところがその甘利氏も「私は1ミクロンも関わっていない」と完全否定したことで、今度は安倍氏に疑惑の目が向けられている。

 安倍氏は参院選で自分の秘書団を河井陣営に派遣して異例ともいえる肩入れをしたからだ。

「幹事長と選対委員長が関与を否定したということは、党本部の指揮命令系統から考えて1億5000万円もの大金の支出を決裁できるのは当時の総裁の安倍さんしかいない」(自民党元役員)

 二階発言の狙いは、疑惑再燃で安倍氏の再々登板の動きを牽制することにあるとみられている。二階派議員が語る。

「安倍さんは森友、加計学園問題に続いて、桜を見る会問題では国会で100回以上ウソの答弁をするなど、多くの負の遺産を残して退陣した。今さら再々登板なんて時計の針を戻すようなことはできない。安倍出馬となれば党内に大きなハレーションが起きる」

 ポスト菅をめぐる自民党内の嵐を前に、“政界の寝業師”と呼ばれる二階氏が連携を図っているのが小池百合子・東京都知事だ。五輪問題でも、二階氏は「中止」に言及して物議を醸し、小池氏と会談を重ねている。

 政治ジャーナリスト・藤本順一氏が語る。

「昨年の都知事選で都民の圧倒的な支持を得ていることを見せつけた小池氏は、自身に有利か否かを見定めながら五輪中止宣言をうかがっている状態。五輪強行路線で尻を突かれている菅首相はそんな小池氏の存在を強く意識せざるを得ない。今や国政に議席がない小池都知事が政局のキーマンになっている。

 二階氏はその小池氏を“カード”にできると考えているし、小池氏も二階氏との蜜月を演出して国政への切り込みを狙っている」

小池が自民党政権を乗っ取る
 女性政治家で唯一、自民党総裁選に出馬した経験を持つ小池氏には、安倍─菅政権に対する怨念がある。小池氏に近い自民党OB議員が明かす。

「第2次安倍政権の内閣改造の際、女性の目玉大臣を探していた安倍さんはかつて自分の内閣で防衛大臣を務めた小池さんの起用を考え、官邸で面接したことがある。しかし、菅さんが『あの女は石破茂を支持した』と強く反対したことから入閣は見送り、その後、小池さんは重要ポストから完全に干されてしまった。小池さんは安倍―菅体制が続く限り自分の総理の目はないと考えて都知事選への転出を決断した」

 2017年の前回総選挙では、小池氏が反撃に出た。安倍氏が野党の選挙準備が整っていないうちに衆院解散に踏み切ると同時に、小池新党「希望の党」を旗揚げして野党の保守系議員を結集、「小池に負けるかもしれない」と安倍氏を慌てさせた。新党は途中で失速したが、「あの時、小池氏自身が出馬していれば、小池政権ができていた」(野党重鎮)とも言われた。

 小池氏はまだ「総理の椅子」を諦めていない。

「小池氏は自らが戦略をつくるのは苦手だが、政治の流れに乗ることは得意としている。その流れを見極めているところでしょう。もう1つは、戦う時は仮想敵をつくる。それが安倍前首相になる」(前出・藤本氏)

 その潮目が変わってきた。

 解散・総選挙が五輪後の9月に行なわれれば、フリーハンドになる小池氏にはもう一度、小池新党で勝負するチャンスがめぐってくる。

 次の総選挙で逆風の自民党は大きく議席を減らし、菅首相は敗戦の責任をとって総辞職に追い込まれる可能性が高い。小池氏の政敵の一人がまず失脚する。選挙後の総裁選に安倍氏が出馬した時こそが、小池氏にとって最後の勝負をかけるタイミングだ。自民党反主流派議員が指摘する。

「総選挙後は自民党内の勢力地図が大きく変わる。地盤が弱い魔の3回生をはじめ安倍チルドレンは軒並み落選し、安倍支持派の力が落ちる。その時点で小池新党が政界第3極の勢力を獲得し、自民党を過半数割れに追い込むことができていれば、二階氏や石破氏ら自民党の反安倍勢力と組んで安倍再々登板を阻止し、小池連立政権をつくる道筋が見えてくる」

 3度目の安倍政権なんて私が許さない──彼女が動いたその時、「小池氏が自民党政権を乗っ取る日」になる。

※週刊ポスト2021年6月4日号